カシュー:殻に秘められた化学兵器


カシューは木の実の中でも最も多く消費されているナッツの一つですね。クリーミーでとても美味しいです。

ところが僕は二つの理由であまり食べては来ませんでした。

しかし、来年リリース予定の製品にどうしてもカシュー原料を使いたいので、今回その問題を解決しました。

その一つは、一般的に生産者の労働賃金が極端に低く抑えられていることです。

ナッツは非常に硬い殻をを持っている種が多く、食べることのできる部分=胚を取り出すのに一苦労です。

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カシューの殻は二重層になっており、その間にはアナカルド酸という刺激の強いフェノール成分を含む液体を含んでいます。

これは植物が捕食者に対して自己防衛を行うために身にまとっている植物毒です。 殻の硬さだけでも十分防衛はできると思うほど硬いのですが、その中に化学兵器を装備したカシューの進化にはただ驚くばかりです。

フェノールといっても、その種類や量によってはヒトが耐性を持っていないものは、体に入ると抗酸化物質やホルミシスとして働くことはなく、ただの毒です。

殻を取る作業で労働者が手袋を着用しないと、酸性液が皮膚を刺激し、また爪と指の間に入って感染がおこし、現地の医療問題となっています。

手袋を着用すれば作業効率は落ちますがこの感染は防ぐことができます。にもかかわらず彼らが手袋をはめないのは、賃金が生活を維持するレベルに届かないほど低く抑えられており、従量制の出来高で報酬が支払われていることもあり、危険を冒しても出来高を上げたいからです。

このインドの加工現場を取材した記事によると一日かけて10キロの殻取りをしても300円しか支払われていませんでした。
https://www.dailymail.co.uk/news/article-6883233/Indian-cashew-processors-2-day-left-burns-shells-superfood-loved-vegans.html

もちろん、すべての生産者がそうではないのですが、出所の生産者がわからない限り価格の安いカシューの背景には労働者の賃金が不当に抑えられている可能性が高いです。

カシューの生産地はインドとベトナムがトップです。それぞれの植民地時代の宗主国はイギリスとフランスです。イギリスとガーナ、フランスとコートジボアール と同じように、奴隷労働がいまだに問題となるカカオだけでなく、他の農産品でも流通を寡占企業が支配していますので、価格低下への圧力は生産地の労働者が受け取ってしまいます。

現在イギリスではヴィーガン人口が急激に増えており、重要な脂質やたんぱく源となるカシューへの需要は高まっています。カシューはミルクやチーズなど乳製品の代替加工品の原料として使われてるからです。また低糖質食でもナッツへの比重は高まるので、低糖質ブームも需要の増加の原因の一つだと感じています。

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ですので、カシューを扱うには農家だけでなく加工に関わる労働者が安全な環境で、生産を委託する取引先が生活が可能な賃金が支払われているかは確認しないといけない問題でしたが、今回クリアできたことはとても嬉しかったです。

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