何を食べてもカラダは酸性にならない


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野菜や果物はアルカリ性、砂糖や肉や脂は酸性。
だから甘いものやお肉や脂ものを食べるとカラダは酸性になる。
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これは私達が誰もが一度は聞いたことがあり、心のどこかで、そのとおりだ、と思っていることではないでしょうか?

このことを信じて、これまで食べてきたジャンクフードをやめてホールフードな野菜や果物をより多く摂っていこうとすることはベターな選択です。

しかし、ケトンダイエットにおいて、標準奨励量のタンパク質は摂取したほうがよいのですが、その量でさえタンパク質は酸性だから・・という理由で遠慮されることがあります。

そして、脂質などは酸性食品そのものですので、血液のpHを気にする方からはさらに恐れられていますね。

この酸性食品=悪のような質問をよくもらいますので、食品pHに関する大きな誤解を解いていきたいと思います。

恒常性機能としての酸塩基平衡

恒常性を維持するために、私達のカラダでは様々な生理学的仕組みが働いています。

血液のpHを維持する機能は、酸塩基平衡(さんえんきへいこう)と言います。

人体のpHは7.35から7.45の範囲で調節されており、平均7.40です。

pHの中性は7.0ですね。

どうしてこの7.0ではなく、弱アルカリの7.4なのか?

それは私も具体的には説明することができません。

しかし、血液pHは人類だけではなく、私達の遠い祖先が太古の海で生活していたころから7.4なのですね。

現代の魚さんの血液を調べてもpH7.4です。

ということは、私達の細胞と血液の様々な物質のやり取りの関係上、pH7.4が一番都合がよかった、と言うことで十分ではないかと思うのですね。

これが、弱アルカリなために、

アルカリ=GOOD
酸=BAD

と思われるようになってしまったのではないでしょうか?

ちなみに、この恒常性が壊れた時には酸塩基バランスが崩れますので、この症状を表す言葉として

「7.35」を下回ると「アシドーシス」
「7.45」を超えると「アルカローシス」

があります。

アルカリに傾きすぎてもいけないのですね。

しかし、「野菜や果物の食べすぎは、アルカリになりすぎるからいけませんよ」とは聞きませんよね。

不思議ですね~

pH調節メカニズム

とても狭い範囲でpHレベルを維持していくために、人体には様々なpH調節機能があります。

1)代謝性アシドーシス
2)代謝性アルカローシス
3)呼吸性アシドーシス
4)呼吸性アルカローシス

以上の4つのpH障害が起こる可能性があるため、これらを修正していく必要があります。

例として、体内で代謝性アシドーシスに傾いた場合、調整のために呼吸性アルカローシスが誘発されます。

細胞レベルの理解

酸塩基平衡を理解するには、細胞レベルでの呼吸の基本的な理解が重要です。

人類は酸素を使ってエネルギーを作る好気性生物です。

個々の細胞は一時的であれば嫌気呼吸を行うことができますが、生命を維持するためには、酸素が必用です。

好気性呼吸でエネルギーを作る際に作られる副産物として二酸化炭素があります。

化学式は次のとおりです。

C6H12O6(ブドウ糖)+ 6O2⇒6CO2 + 6H20 +エネルギー(38個のATP分子と熱)

一つのブドウ糖分子と6つの酸素分子から、6つの二酸化炭素分子、6つの水分子、そしてエネルギーと熱が生産されるのですね。

この過程で二酸化炭素が生まれていますね。

この二酸化炭素は、体内の酸塩基平衡を保つのに役立ちます。

この機構を重炭酸緩衝系=バイカーボネートバッファーと呼びます。

CO2 + H20 <-> H2C03 <-> HCO3- + H+

H2C03:炭酸
HCO3- :重炭酸
H+:水素イオン

細胞呼吸中に形成される二酸化炭素は、水と結合して炭酸になります。

その後、炭酸は重炭酸と水素イオンに電離します。

この反応は、人体にある多くの緩衝システムのうち中心的な役割を持っています。

帯域が狭いpH内に調整できるように、この緩衝システムが平衡状態を作り、pHが急激に変化することを防ぎます。

酸性になる、と言うのは血中のH+水素イオンが多くなることを言います。

この反応に必要な反応のすべての成分が体全体に存在し、環境に適応しながら方程式の右側にシフト(アルカリへ)したり左側にシフト(酸性へ)したりすることで、pHを正常に保つのですね。

これ以外にも緩衝系は複数あり、何としてでもpHを正常に保とうとするのですね。

1. 体液–重炭酸緩衝系– ヘモグロビン緩衝系– 血漿タンパク緩衝系– リン酸緩衝系
2.肺でCO2排出
3. 腎臓でH+排出

2の呼吸においては、方程式の左側の過剰なCO2を排出します。

3の腎臓では過剰なH+を排出します。

酸性の食材とは?

カラダを酸性に傾けるのはH+の存在です。

そして、体内の調節をしているのは重炭酸緩衝系=バイカーボネートバッファーです。

すると、その原因はCO2やH+だということがわかりますね。

このCやOや、そしてH+はどこから来るのか、と言うことなんですね。

それが、酸性食材の正体だからです。

それは・・・糖質、タンパク質、脂質です。

グルコース C6H12O6
グルタミン C5H10N2O3
ラウリン酸 C12H24O2

CもOもHもたくさんありますね。

これが酸を作っていくんです。

極端になりますが、酸性食材を減らしましょう、ということは、エネルギーを作るための燃料を摂るのを減らしましょう、ということ同じなのですね。

お野菜の中には・・・糖質はともかく、タンパク質や脂質は少ないですので、アルカリよりなのは当然ですね。

しかし、何を食べても私達のカラダのpHは正常に保たれます。

野菜だけ食べてもアルカリになりすぎることもありません。

お肉だけを食べて酸性になりすぎることもありません。

pHを最適に調整仕組みがカラダには存在するのですね。

まとめると・・

「野菜や果物はアルカリ性、砂糖や肉や脂は酸性」のように、アルカリVS酸に分ける意味はありません。

「甘いものやお肉や脂ものを食べるとカラダは酸性になる」のか?

何を食べてもカラダは酸性になりません。

ですので、安心して、何でも美味しくいただきましょうね~

Physiology, Acid Base Balance Last Update: September 14, 2020.

21 Global Club Newsletter NL172 より編集掲載

何を食べてもカラダは酸性にならない」への2件のフィードバック

  1. 血液のpHについて調べてたので、有用な情報をありがとうございます。
    KOJI先生や金森重樹さんのTwitterで、断糖食やケトン代謝について勉強中です。
    大学で化学専攻してましたが「生化学」となるとまた全然違った知識が必要で苦戦しています。

    断糖でケトン生成までは多分OKなのですが、その影響かおそらくアシドーシスに傾いてるようで、二度目の中断中です。
    もっと勉強して原因を突き止め、BREAK THROUGHしたいと考えています。

    1. 渋谷さんは化学を専攻されていたのですね~。食事によるケトーシスでは基本アシドーシスにはならないとの理解です。ですので、渋谷さんの見解も興味がありますね~。

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