「リトリート」とは本来「退却」を意味します。しかしここでいう退却は「逃げること」ではありません。未来へと進むために、あえて日常から距離を置き、自分を整えるための“前向きな隔離”なのです。
私たちが日常の中で習慣を変えようとするのは、走りながら車のタイヤを交換するようなもの。
難しく、続かないのも当然です。だからこそ、一度立ち止まり、日常の流れから自分を切り離す「リトリート」という時間が必要になります。
そこでは、普段とは違う次元の時間が流れ、自分の内側と本当に深く出会い直すことができるのです。
私自身の体験:15歳で訪れたエサレン研究所
思い返せば私が初めてリトリートを体験したのは15歳のとき。場所は、アメリカ西海岸・ビッグサーにあるエサレン研究所でした。
その頃、私は高校留学に失敗し、異国の地で頼る人もおらず、西海岸を放浪していました。
偶然耳にしたエサレンの名前。
心理学やスピリチュアルの世界で名高い場所でしたが、特に目的もなく、時間だけはたっぷりある中で参加を決めました。
当時はEメールすらなく、公衆電話からコインを積み重ねて予約を取り、飛行機とバスを乗り継いでようやく辿り着きました。
断崖に湧く温泉から見下ろす果てしない太平洋。
夜には焚き火を囲み、ギターやドラムが響く中、裸足の人々が星空の下で語り合う。
心理学、瞑想、アート、身体表現…。草木の香りや潮風とともに、すべてが溶け合う空間でした。
当時の参加費は、ボランティアによる支えもあってわずか3万円ほど。今では20万円以上するリトリートも珍しくありませんが、その頃は本当に「人生を変える体験」が手の届く価格で提供されていたのです。
15歳の私にはエサレンが提供するすべてを受け取る器はありませんでしたが、それでも胸いっぱいの体験でした。
そして今、自分自身がリトリートを提供し、またあらゆるリトリートに参加する立場になっていることは、当時の私には想像もできなかったことです。
リトリートは「旅行」ではない
こうした経験を通じて、私は確信しています。
リトリートは観光旅行ではありません。日常を離れ、人生を変える「場」そのものなのです。
もし今、あなたが「新しいタイヤに交換するタイミング」を探しているなら、ぜひリトリートを体験してみてください。
きっと、これまで気づかなかった自分と出会い、新しい一歩を踏み出せるきっかけとなるはずです。