小さな花が名づけた千二百年の寒さ ―― ヤンガードリアスという「揺り戻し」

いまからおよそ一万二千九百年前のことです。 長い氷河期がようやく終わりかけ、地球は少しずつ暖まりはじめていました。 北の大地を覆っていた氷が溶け、森が北へ広がり、人も動物も、あたたかくなっていく世界にゆっくりと体を慣らし … 続きを読む

マヤ文明はなぜ「崩れた」のか――一つの原因では説明できない、二百年の物語

中米の熱帯雨林の奥に、いまも巨大な石の神殿がそびえ立っています。 ティカル、コパン、パレンケ。 かつて数万の人々が暮らし、暦を刻み、王の名を石碑に彫りつけた都市の跡です。 ところが西暦八〇〇年から九〇〇年ごろ、この南部低 … 続きを読む

海が一世代で街を飲んだ日 ―― 一万四千六百年前の「大洪水」の記憶

世界中の神話に、よく似た話が一つあります。 海がせり上がり、低地を飲み込み、人が高台へ逃げる。 ノアの箱舟も、ギルガメシュ叙事詩の洪水も、日本や太平洋の島々に散らばる水没伝承も、細部は違えど骨格はそっくりです。 これほど … 続きを読む

氷の艦隊が海を渡ったとき――ハインリッヒ・イベントが教える、気候が「めくれる」瞬間

深海の底に、細かな石ころが降り積もった層があります。 北大西洋の海底から抜き取った泥の柱――堆積物コアと呼ばれる、時間を輪切りにしたような試料――を調べていくと、ある深さで、明らかに周囲と違う層が現れます。 砂や粘土では … 続きを読む

7万年前、空が灰に覆われた ―― トバ巨大噴火と「人類絶滅」説のゆくえ

いまから7万年ほど前、スマトラ島で、地球が経験しうる最大級の噴火が起きました。 降り積もった火山灰は、地球の表面のおよそ7.5パーセントを覆ったといいます。 そして長いあいだ、この一度の噴火が、私たち人類を絶滅の淵まで追 … 続きを読む

生まれた日が、その人を語る ―― アステカの暦占いと、東洋の宿命論

テノチティトランで生まれた赤ん坊と、長安や京の都で生まれた赤ん坊。 二つの文明は、互いの存在を知らないまま、同じことをしていました。 生まれたその日から、その子が何者になるのかを読み取っていたのです。 英語で星占いを意味 … 続きを読む

世界はすでに四度、終わっている ―― アステカ「五つの太陽」の神話

多くの文明は、世界がどう始まったかを語ります。 けれどもアステカの人々は、世界がすでに四度、終わってしまったことを語りました。 そしてこの五度目の世界も、いつか必ず終わると信じていました。 その物語は「五つの太陽」と呼ば … 続きを読む

「稲妻」⇔ “lightning” ―― 雷が稲の「つま」だった頃

今朝は、朝から激しい雨でした。 散歩に出ることもできず、窓の内側から、庭を見ていました。 6月に植えたサツマイモが、雨に打たれて、うれしそうに濡れています。 今日は、私が水をやらなくてもいい日です。 空が、代わりにやって … 続きを読む

飢餓を生き延びるための、配給システム ― 「誰が先に食べるか」を決める、門番たち

ひとつ、意外なことからお話しします。 ブドウ糖は、あなたの細胞に、勝手には入れません。 血糖が上がれば、糖は自然と細胞に吸い込まれていく——多くの方が、漠然とそう思っています。けれど、実際はそうではありません。ブドウ糖は … 続きを読む

ケトン値だけを見ても、わからない —— GKIという、二つの数字の関係

血糖値を自分で測る方は、ずいぶん増えました。 最近は、指先のひとしずくの血からケトン体を測る小さな機器も、家庭に届くようになりました。 たとえば、あなたのケトン体の値が1.0だったとします。 これは、低いのでしょうか。 … 続きを読む