先の大戦前後を生きた人は川の色が大きく変わったことに気付いた方がたくさんいました。現在も60代以上であれば地域によっては河川の変色を体験した方もいらっしゃると思います。
これはほとんどの方は「工業廃水」が主な原因だと思っているのではないでしょうか。日本が世界の工場となるべく環境への配慮を後回しにして経済成長を優先させた時代もありましたが、現在では厳しい環境規制により以前のような水質問題は少なくなりました。
しかし、昭和初期の川の色に戻ったわけではありません。農地開発が殆ど終わった現在でも土壌の有機物は河川に流れているからです。
農薬、除草剤、化学肥料などを使う慣行栽培では土壌微生物が激減します。有機物を土壌に隔離する役割がある微生物が少なくなると、有機物の割合が数年で10%から1%へと減り、化学肥料の注入がないと収穫サイクルが回らない状態に陥ります。この過程で失われる土壌有機物、さらには作物に吸収されなかった肥料の有機物が河川を通り海に流れていきます。
私たちの食料の多くを育む大地の生産力が失われるだけでなく、有機物の移動先である海水の環境汚染は「Dead Zone」と呼ばれる生態系破壊が起きています。
「機」は炭素のことで、これは「有」だけでなく「循環」させることが大切です。そのためには今後の単一品種栽培には肥料生産のための家畜とその消費も必要です。
農産物・畜産物を消費する私たちの健康と川の色には揺るぎない因果があることを伝えていきたいです。