私たちは命をいただきながら、自らの命をつないでいます。そして、自らが生きるということは、多くの生命の犠牲の上に成り立っています。
お肉を消費することは、動物愛護や人道的観点から非難されることがあります。動物には感覚があり、より感覚の低い、もしくは感覚を持たない植物を食べよう、という運動が過去に増して大きくなっています。
実際に、動物愛護を理由にヴィーガン食に転向するかたも多くいらっしゃいます。
そこで、食事をする前の、「いただきます」、の時にしか感じないことを、あえて書いてみようと思います。
「栄養的に優れているかどうか」の議論であれば、健康維持にはサプリメントが必要なヴィーガン食よりも、お肉を含む食事の方が「栄養的に」優れている、といえます。
しかし、動物愛護が目的で・・とするのであれば、それは一つの考え方ですので、尊重されるべきだと考えます。
しかし、この動物愛護の観点からしても、お肉を食べる食事の方がヴィーガン食よりも優れている、という考え方もあります。
まず、痛みなどを感覚的に感じることができる動物に、苦痛をできるだけ 与えない、という前提には同意していただけると思います。
動物タンパクを育てるには、より多くの植物が必要?
植物の種類にもよりますが、1キロのお肉を作るために、2キロから10キロの植物が必要だと言われています。耕地は限られていますので、増え続ける人口を支えるためにも、カロリーベースで考えると、できるだけ食事を植物中心にしていこうという考えがあります。
しかし、本当にこれが正しいのかについて、2011年に発行された論文が反論しています。 同量のタンパク質を植物で補うことは
Australian Zoologist volume 35 (4)
- より大きな環境破壊を起こす
- 最低でも25倍の「感覚を持った」動物が殺されている
- 動物の虐待度は一般的な畜産よりも激しい。
としています。どういうことなのでしょうか?
単一作物栽培は環境・生態系を破壊
まず、お米や小麦を栽培するためには、もともとその場所に育っていた原生の多様な植物をすべて根絶やしにし、単一作物で置き換えないといけません。そして、農薬や除草剤などをまくとすると、本当にその単一作物以外の生態系は失われていきます。この過程で、失われる生命が多くあります。
現在の耕地はすでに効率よく利用されています。ここから収穫量を増加させようとすると、上限に限界はありますが、さらに農薬、除草剤、化学肥料を使っていくか、新たな自然を壊して畑を作らないといけません。
畑や植物栽培、というと「環境に優しい」と一括りに考えられがちですが、生命の犠牲は起きています。
それと比較して、牧草牛は現在の自然の中で育てることができます。その自然の多様性を維持できます。また環境の循環を促進することができます。
現代の農法は動物の犠牲の上に
トラクターが農地を耕す時に鳥の集団が後方で舞う姿を見たことはありますか?畑を耕すともちろんミミズやその他昆虫が表面に出てきますので、それをお目当てに集まっているのですが、実はそれ以外にも殺傷された蛇やトカゲやネズミなどがでてくるからです。
また穀物を貯蔵する際に使われる 殺鼠剤 でも多くのネズミが死んでいきます。またあまり知られていないことですが、穀物生産が集中する場所ではネズミの疫病が発生する際は大量死がおこります。
100キロ当たりのタンパク質を収穫するために、2.2頭の牛さんが必要です。 1ヘクタールで最低100匹のネズミが死んでいると仮定すると、100キロの植物タンパクを小麦から作るためには、約25倍の命が失われていると試算されています。
この数字の中には、多くの方が感覚がない、もしくは低い、と思っている昆虫やクモ類、そして蛇やトカゲなどの爬虫類は含まれていません。
また、ネズミの知覚能力も高くないと思っている方もいますが、彼らも人間と同じ哺乳類動物で高度な感覚能力を持ち、求愛の歌も歌います。
ストレスのない状態で飼育されている牛さんたちの最後は、本人たちも気づかないうちに一瞬で終わりますが、 トラクターで引かれたり、殺鼠剤を食べたネズミは最後まで苦しみながら死んでいきます。
カロリーではなくタンパク質をベースに考える
カロリーベースで考えると、牛を育てるためには、より多くのトウモロコシや小麦が必要なので、それなら、お肉ではなく植物を中心に食べていこう、ということになります。
しかし、人間に欠かせないのは穀物由来の炭水化物ではなく、タンパク質と脂質です。しかも、放牧をすることで、そのたんぱく質はそこに生えている草を栄養に作られます。これほど生命を犠牲にしない食物の育て方はありません。
最後に・・・どんなに工夫をしたところで、生命が生きていくためには、その他の生命を犠牲にせずには成り立ちません。毎回の食事で、この命を支えてもらっている全ての命に感謝を忘れないように心がけたいと思います。
こんにちは。はじめまして。
とても興味深く読ませて頂きました。ありがとうございます。
最近、種差別やヴィ―ガンについて興味があり調べているのですが、全人類がヴィ―ガンになったら、動物にとって本当に幸せな(もちろん人間にとっても)世の中が実現するのでしょうか?
畜産をやめ、食料をすべて植物由来にする。そして動物を駆除しない世界というのはどんな世界なのでしょうか?
KOJIさまはどう思われますか?
ありがとうございました。
miyaさん、はじめまして~
全人類がヴィーガンになる・・・
まず栄養的に最適なカラダを作るためには、ヴィーガン食は難易度が高いですので、よほど栄養的に教育が施され人々の生活習慣も大きく変わらないといけないと思います。
また、その食糧需要を支えるための穀物を栽培するにはさらなる環境破壊が進みますので生態系の健全さが犠牲になります。
穀物に頼らない放牧畜産により、人間、反芻動物、その他の生態系のバランスを作っていくのが最適だと考えています~。
ご返事有難うございます!
私がわからないのは「牛肉を1kg作るには飼料が10kg必要で、その飼料となるトウモロコシや小麦など育てる為に多くの土地、水、化石燃料が使用されている」というよくある主張です。
これが事実とするならば、ヴィ―ガンの方々の主張は正しいような気がするのですが、事はそれほど単純には思えません。
この件について、お時間のあります時にでもご意見をお聞かせ願えるとありがたいです。
有難うございました。
こちらの論文は、よく聞かれる「人類がすべて菜食になれば地球を救える」のような主張の誤解を解いてくれます。
温暖化ガスはわずか2.6%しか減らず、炭水化物加工食品の消費が劇的に上昇しますので、健康はさらに悪化します。
google翻訳でもある程度正確に訳してくれます~。
https://www.pnas.org/content/114/48/E10301
お忙しい所有難うございました!
直観的に考えて、そんなに単純な事ではないと思っていました。
さっそく読んでみます!
本当にありがとうございました。