世界の農地の大部分は小規模農家によって管理されているというのが一般的な認識ではないでしょうか。
世界には5億7千万の農家が農業に従事しています。しかし、そのうち2ha以下を保有する小規模農家は全体の農地の12%しか保有していません(1)。
参考: 1ha = (100m x 100m=10000m^2)
そしてこのような小規模農家が多い所得が低い国々では、農家当たりの農地面積は減り続けています。
“Farms, family farms, farmland distribution and farm labour: What do we know today?” November 2019
地域コミュニティにおける重要な役割
小規模農家の役割はただ農地から収穫を上げるだけではありません。田舎のコミュニティの経済や祭事の中心となり、地域社会のバックボーンとなっています。小規模農家の生活を脅かすことは単に私たちの食料の質の低下のみならず、地域社会の荒廃を招きます。
アフリカ、南アメリカ、東南アジアと、小規模農家から大規模農業企業へとグローバル規模で農地が移転しています。
「アグリアンリフォーム」をご存知でしょうか?
日本でも戦後に行われた「農地改革」を含む、市場の自由化、農業資材の供給や作物流通の整備、そして財務支援などを含んだ政府による農地の再配分活動のことです。
それまでは、貴族層や地主に集中していた農地の利権がアグラリアンリフォームによって小規模農家の所有となり、貧富の差もなくなっていくはずでした。
現在 では大企業による農業支配を世界中で観察できるようになっています。
世界の農家の90%を占める小規模農家は世界の農地のわずかしか所有してません。NPO法人GRAIN の試算では世界の農地の25%しか所有していません。小規模農家が多い中国を統計から除外するとわずか17.2%の農地しか所有していないということです。
小規模農家が本当に必要な食糧を作る
今は世界中で大規模農企業が小麦や大豆をの生産を拡大を続け、伝統的農業を行ってきた小規模農家の土地は減り続けています。
地域の小規模農家は、家族や地域の人々のために食べ物を作ります。本当に必要とされている食材を必要としている人たちに作物を届けることができるのです。
小規模農家は地元の食事のニーズに合わせたものを作り、地元のマーケットで売れるものを作ります。
しかし大企業が農業を行う時、その目的はROI(Return On Investment=投下資本収益率)しかありません。
大規模な工業生産的農業による慣行栽培は化学薬品により土壌を汚染しながら行われています。 その地域に居住する小規模農家のように、土壌永続的に作物を生産する必要性を感じませんので、循環などには目もくれません。
投資額に対してどれだけのリターンを得るのか、ただそれだけに軸を置いて農業活動を行うのです。
そして、その食べ物が誰に買われ、誰に行き渡るのか、ということは一切考慮されず、世界で最も高く買ってくれる企業へと輸出されます。
世界中でまだ8億人以上が十分が十分に食べることができない飢餓状態にあります。
私たちの食事食料の未来は、地域の小規模農家が作る食べ物にかかっており、そして健康的な食材は小規模農家のみが作ることができるのです。
1) World Development Volume 87, November 2016, Pages 16-29
2) https://www.wfp.org/publications/2019-hunger-map