どんな食材から脂肪を摂っていくかを正しく選んでいくには脂肪酸の学習が必要ですが、世の中の人達のどのくらいが、脂肪酸の長さとか、飽和度の話を理解できるのでしょうか?
現代に健康を作っていくことは簡単ではありませんが、それでも何か3つだけ教えてください、と言われたら、油の種類と選択の話は確実にその一つになります。
わずか1時間そこらの勉強で、数十年後の身体の健全性が大きく変わってくるからですね。
お金は無くなっても、また作ればよいですが、健康は一度失うと完全に取り戻すことはできません。
それだけに、人生のどのタイミングで「脂肪酸の分類とそれが摂れる食材」に出会えるのか、は大切ですが、遅すぎる、ということはありませんね。
人生余命がある限り、脂肪酸の分類を知ることができたというのは、本当にラッキーなことだと思います。
脂肪酸の酸化の生理学的意味
【オイルの酸化しにくさ】
オイルの選び方の一つは、「酸化しやすさ」です。
加熱すると油の酸化は進みますので、加熱した時にどれだけ酸化しやすいのかはとても大切な指標です。
オイルの酸化の研究では、飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸は多価不飽和脂肪酸と比べて、酸化しにくいことが分かっています。
そして飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸よりも酸化しにくいです。
理由は、その分子構造が安定しているからです。
酸化油脂が体内に入ってきて循環にはいると、際限のない酸化反応がスタートします。
揚げ物を行った時のオイルの安定性や酸化度に関する比較試験では、ココナッツオイル、オリーブオイル、アボカドオイルなどが、その順番で強く、多価不飽和脂肪酸は、多価度が増えれば増えるほど、安定性は低く、酸化もしやすいです(1)。
ココナッツオイルは植物油の中では唯一飽和脂肪が90%を超えるオイルで、研究では8時間高熱で加熱しても、安定度は失われません(2)。
これは8時間しか品質が持たない、といことではなく、試験が8時間で終わったからです。
家庭調理程度の過熱では食材の品質レベルでの酸化は進まないのです。
多価不飽和脂肪酸が豊富な調理用油を高温で揚げると、酸素を燃料とする過酸化の急激な連続するリサイクルによって、高濃度の細胞毒性および遺伝毒性の脂質酸化生成物が生成されます。
これらの毒性は癌や心臓血管疾患および神経疾患のリスクの増大させます(4)。
【酸化した油脂から発生するアルデヒド】
酸化した油、というとそれだけでも十分健康に悪影響がありますが、酸化した油が怖いのは、生体内でアルデヒドに変わっていくからです。
アルデヒドの中でも、アセトアルデヒドは一般的に知られていますね。
アルコールは肝臓で代謝されてアセトアルデヒドに変わりますが、猛毒ですので最も優先的に解毒されていきます。
その他の生体内で自然発生するアルデヒドとしてヘキサナール、アクロレイン、マロンジアルデヒドなどがあります。
これらは、脂質の過酸化反応で生成されます。
アルデヒドは細胞毒性および遺伝子毒性があり、健康に有害な影響を引き起こします。
特に多価不飽和脂肪酸での高温調理中に生成されます。
一般的には多価不飽和脂肪酸の多いサラダオイル=ヘルシーオイルということになっていますので、外食店やお惣菜などは、多価不飽和脂肪酸が多く含まれている工業的に生産された種子油で作られています。
大豆やトウモロコシ油、キャノーラ油などがその代表です。
アルデヒドは、揚げ物に容易に浸透したり、気化するため、食事や呼吸を行うだけで、体内に入ってきます。
サラダ油を食べない、ではなく、調理している横を通りすぎるだけでアルデヒドは体内に入ってきますので、気分が悪くなったりめまいがしたりする人もいるでしょう。
脂の酸化とその消費は公衆衛生上最も見過ごされている、しかも被害が甚大な脅威の一つだと言えるでしょう。
あらゆる代謝性疾患は間違った油から
現代のほとんどの代謝性疾患は間違った油を摂ることから始まります。
糖ではないの?と思われるかもしれませんが、どれだけ糖を食べようと、糖代謝が機能している限り、何の問題もありません。
糖代謝の機能低下はインスリン抵抗性により起こります。
あらゆる慢性病のトリガーとなるインスリン抵抗性は酸化ストレスによって起こるのです。
最後に、これまでお話ししてきたことと矛盾するようですが、私は多価不飽和脂肪酸が悪い、と言っているわけではありません。
ただ、人類が進化上摂取してきた脂肪の中に多価不飽和脂肪酸は少なく、これを安全に解毒及び代謝していく能力は、現代の多価不飽和社会に適応できるほど高くない、ということです。
自然食材に含まれている多価不飽和脂肪酸の量などは気にせずに食べていっても大丈夫でしょう。
枡田浩二