ケトン値だけを見ても、わからない —— GKIという、二つの数字の関係

血糖値を自分で測る方は、ずいぶん増えました。
最近は、指先のひとしずくの血からケトン体を測る小さな機器も、家庭に届くようになりました。

たとえば、あなたのケトン体の値が1.0だったとします。

これは、低いのでしょうか。
それとも、高いのでしょうか。
そして、それはあなたの代謝にとって、意味のある数字なのでしょうか。

実は、この問いに単独では答えられません。
ケトン体の数字だけでは、あなたの代謝が今どこにいるのかを、言い当てることができないからです。

一つの数字を、切り離して読む——「孤読」という落とし穴

現代の健康情報は、私たちに数字を一つずつ差し出してきます。
血糖値。
コレステロール。
ケトン体。

どれも、それ単独で「高い・低い」と語られがちです。

一つの数字を、文脈から切り離して読む。
これを孤読と呼びたいと思います。
片方の手のひらだけを見て、拍手の音を語るようなものです。

ケトン体も同じです。
1.0という数字が深いケトーシスを意味するのか、それともたいした意味を持たない揺らぎなのかは、もう一つの数字——血糖値——と並べて初めて見えてきます。

GKIとは、血糖とケトンの「比」

ここで役に立つのが、GKIという考え方です。
日本語にすると、グルコース・ケトン指数。
血糖値とケトン体を、一つの比として表したものです。

計算そのものは、とてもかんたんです。

GKI = 血糖値 ÷ ケトン体(どちらもmmol/Lで)

数字が小さいほど、血糖が低くケトン体が高い。
つまり、それだけ深いケトーシスにいる、ということを意味します。

「指数」という言葉が覚えていること

少しだけ、言葉の寄り道をします。

GKIの「指数」にあたる英語、index という言葉は、ラテン語の index に由来します。
これはもともと「人差し指」、つまり何かを指し示すための指を意味していました。
指し示すという動詞 indicare と、同じ根を持つ言葉です。

おもしろいことに、日本語の「指数」にも、同じく「指」という文字が宿っています。
洋の東西を問わず、この種の数字は、何かを指し示す一本の指として生まれたのですね。

では、GKIは何を指し示すのか。
それは、ケトン体という一つの数字ではなく、血糖とケトン体が今つくっている関係そのものです。

計算してみる——mmolに慣れていなくても大丈夫

日本の血糖計の多くは、mg/dLという単位で表示します。
GKIの計算にはmmol/Lが必要ですが、換算は18で割るだけです。

たとえば、血糖値が90mg/dL、ケトン体が1.0mmol/Lだったとしましょう。

90 ÷ 18 = 5.0
5.0 ÷ 1.0 = 5.0

この方のGKIは、5.0ということになります。

換算の早見表も載せておきます。

血糖 mg/dL 70 80 90 100 110
mmol/L 3.9 4.4 5.0 5.6 6.1

手で計算しなくても、血糖値とケトン体を入れるだけでGKIが出るツールを用意しました。
よかったら、ご自分の数字で一緒に試してみませんか。

GKI計算ツール(21 Global Club)

目的によって、目指す数字は変わる

GKIのおもしろさは、目的によって「目指す深さ」が変わるところにあります。

目的 GKIの目安
がんの積極的な代謝管理 1以下
治療を意図した深いケトーシス 1〜3
認知や代謝の改善 3〜6
減量・予防 6〜9
ケトーシスとして不十分 9以上

そもそもGKIは、脳腫瘍の代謝管理を研究するなかで提案された指標です1
がん細胞の多くは、酸素が足りていても糖を発酵のように使い続けます。
これは『Warburg effect(ワールブルク効果)』として知られる性質です。
その性質を踏まえ、「血糖を下げ、ケトン体を上げる」状態をどれだけ深く保てているかを、一つの数字で追えるように考えられました。

一方で、健康づくりや減量のためにケトン食を実践している方にとって、GKIは別の意味を持ちます。
「自分のケトーシスは、思っているより浅いのか、深いのか」を教えてくれる、率直な鏡になります。

たとえば、朝いちばんの数字が高めに出ることがあります。
これは起き抜けのホルモンが血糖を持ち上げるためで、こうした現象も、血糖とセットで見て初めて腑に落ちます。

数字ではなく、関係を読む

私たちは、つい一つの数字に一喜一憂してしまいます。
けれど、身体の中で起きていることは、いつも複数の要素の関係として立ち現れます。

ケトン体だけを見て安心したり落ち込んだりするのをやめて、血糖と並べ、その比を読む。
それは、孤読をやめて、関係を読むということです。

次にケトン体を測るときは、血糖もいっしょに測ってみませんか。
一つの数字ではなく、二つの数字が手のひらの上で結ぶ関係を、私たちも一緒に読んでいけたらうれしく思います。
その比のなかに、あなたの代謝の、今日の素顔が映っています。


  1. Meidenbauer JJ, Mukherjee P, Seyfried TN. The glucose ketone index calculator: a simple tool to monitor therapeutic efficacy for metabolic management of brain cancer. Nutr Metab (Lond). 2015;12:12. doi:10.1186/s12986-015-0009-2(PMID: 25798181) 

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