マインドフルネス・ストレス軽減法(Mindfullness Based Stress Reduction) は1979年にMITで教育を受けたJon Kabat-Zinn により開発されたカリキュラムで、マインドフルネス=今この瞬間に注意を払っている状態、へ導くプログラムです。
通常の瞑想は呼吸やマントラを意識し雑念を払いながら注意した一点に集中しますが、マインドフルネス瞑想はヴィパッサナー 瞑想と呼ばれる瞑想法で、通常の瞑想のように一点集中による静寂と安定を手に入れることに始まりますが、雑念が現れてもそれを払おうとせず、その想念も評価せず意識していくことに特徴があります。つまり一点ではなく自分の意識全体が集中の対象となります。
雑念に対しても意識して注意を払うことにより、そのことにとらわれなくなるという、ある意味逆説的な効果により本来集中したいこと、今ここにあること、を意識できるようになるというメソッドです。
ヴィパサナー冥想はもともとヒンズー文化から仏教の成り立ちにおいて開発された冥想法ですが、米国で急速に浸透している理由の一つにスピリチュアリティ、霊性とは明確に線を引き交わらないようにしている点にあります。
霊性とは宗教や人間より上位の存在のことに始まり、人間内外の霊魂や、輪廻による前世や来世、はたまた宇宙人や他惑星の意識など、あらゆる考えや体系があり人によって信じるものや受け入れる範囲が違うため、霊性と交わるあらゆる考えは広く浸透させようとする時に、市場が制限されます。僕個人としては霊性は個人のものであり、許容できる人と共有すればよいと考えています。まぁくどくならなければ話を聞く分はどんな考えでもOKというスタンスです。
マインドフルネス瞑想が浸透するもう一つの理由は積極的に効能の科学的立証が行われていることです。この5年間でNIH(アメリカ国立衛生研究所)によってマインドフルネス瞑想のあらゆる効能について50の臨床試験が助成され、2012年だけで477件の論文が医療や健康関連の学会ジャーナルに掲載されています。効能の代表的なものに、ストレスの原因となるコルチゾルと呼ばれるストレスホルモンや血圧の減少、免疫反応の活性化などがあります。
健康面だけでなく生産性や問題解決能力や集中力の向上などの仕事のパフォーマンスを高める効能も次々と立証されており、僕が米国で会社員をしていた企業にも社員教育(福利厚生?)の正式なプログラムとして導入されました。
企業や政府がマインドフルネス瞑想を採用するのは脳科学の進歩により、実践によって脳が成長することが証明されたこともあるでしょう。筋力トレーニングで筋肉を成長させるように、脳も成人後もトレーニングによって、神経の可塑性(かそせい)と呼ばれる脳神経の組換えが起こることにより冥想効能を高めることが分かったからです。
マインドフルネス瞑想はまだ日本では広く認知されていませんが、定着するかは別として、あと3-5年でブームが到来することが予想できます。これにより、一般人が簡単なメソッドで大きな「癒し」効能をえることができるようになり、科学のサポートを得たこの瞑想により多くのスピリチュアリティ関連ビジネスが駆逐されるでしょう。