ケトン体を燃料を使って行くことで、カラダには様々な生理的変化が起きます。ケトン体は燃料以外の役割があるということです。
役割のひとつにシグナル伝達があります。
ヒストン脱アセチル化の抑制
生命情報はDNAに格納されています。カラダがおかれた環境からの刺激に応じて細胞内ではDNA情報をもとに様々なタンパク質を作り出します。
このプロセスの第一ステップは「転写」とよばれ、DNAから情報を読み取りRNAで再現していきます。
話は少しずれますが、30年ほど前までは図書館でリサーチなどを行う時、古い文献はマイクロフィッシュというフィルムに収められ、引き出しの中に整理されていて、それを一つ一つ探し出すのも一苦労でした。
欲しい情報がどこにあるのかがわかっていても、情報を読み取るのは、テキストサーチが出てくるまで大変なことだったんですよね。
同じように実は膨大な量のヒトのDNAの情報も、ヒストンというタンパク質による作用でものすごくきっちりと整理されています。ヒストンの「脱アセチル化」というプロセスで、DNAはとてもコンパクトにまとめられているのです。そのおまとめ役を「ヒストン脱アセチル化酵素」という酵素が担っています。
ここから情報を取り出すためには、ヒストンを「アセチル化」しないといけません。するとヒストンとDNAのまとまりがほどけて、DNA情報を取り出しやすくなるのです。
DNA情報が取り出しやすくなると、そこから新たなタンパク質を作り出しやすくなります。これを「遺伝子が発現する」ともいいます。
少し周りくどくなりましたが、ケトン体のβヒドロキシ酪酸は、「クラスI」という種類の脱アセチル化酵素を阻害することがわかっています。
すると様々な遺伝子発現が増加するのですが、その中に「酸化ストレス」に対するいくつかの耐性遺伝子も増加します。
そして、外因性のβヒドロキシ酪酸を投与したり、断食やケトジェニック食を行うと、酸化ストレスに対する耐性も向上します。
Science. 2013 Jan 11; 339(6116): 211–214.