ケト・ラッシュ

ケトンダイエットを含むあらゆる低糖質系のケトン体を主燃料としていく食事法には一時的な副作用が起こることがあります。

特にケトン導入期 (開始~3日間)からケトン順応期(開始後2週間~2ヶ月)にかけて、糖質燃料に完全順応していた身体が新しいケトン体燃料に適応しようとする時に、慣れていない燃料を使うため、頭痛、倦怠感、疲労感、吐き気、便秘、筋肉のつりや痙攣などが起こることがあります。

これらの症状はケト・フル(ケトン風邪)と呼ばれ、低糖質食が危険であると主張する人達の理由に使われたりしますが、移行時の一時的なもので大事になることはなく、全く心配する必要はありません。

逆に身体が順応中であることを表していますのである意味喜ばしい症状だと言えます。多くのケースで数日~2週間以内に症状は収まってきます。

ケトンダイエットに副作用はない!と言いたいのですが、稀におこる例外もあります。今回はそのうちの一つ、ケト・ラッシュを紹介いたします。

Keto-Rash 「色素性痒疹」

Keto-Rash (ケトーシス時に起こる痒疹 [ようしん] )はとても稀に糖質を制限した際に主に胸や背中にかけてでてくる痒みをともなう発疹です。ケトン体が炎症を起こしているという主張もありますが、原因は明らかではありません。

痒い発疹などは放っておけばよいと思うかもしれませんが、この痒疹は色素沈着をともないますので、特に顔や顏に近い部位に出てきた時などは美容の観点からは好ましくありません。また人によっては数週間にわたり長期的に症状が持続することがありますので、いつ治るかわからない症状に対して自然治癒で頑張るのも美容の面ではリスクを感じる方もいらっしゃいます。

Keto-Rashは皮膚科ではPrurigo Pigmentosa=「色素性痒疹」と診断されるでしょう。これはケトン体が高濃度で出ている時に発症すると言われています。炎症に対しては抗生物質、痒みに対しては抗ヒスタミン薬が処方されるでしょう。

私見ではケトン体の上昇は相関的に観察されているだけであって直接的な原因ではないと考えています。脂質分解が活発に行われ、それと一緒に炎症作用を起こす物質が血中にでてくることが理由だと思っています。また痒みをともなうことから何らかの毒素による炎症ヒスタミンが過剰に生成されていることが考えられます。

脂質分解は脂肪と一緒に蓄積されていた毒素や化学物質が大量に血中に出てきます。そのような毒素は肝臓で解毒され、胆汁と一緒に小腸に排出されます。ここで胆汁が少ないと毒素が十分に排出されずに体内に毒素が残ります。

また胆汁の量に問題がなくても、食物繊維が少ないと、腸内でうまく毒素が分解されません。解毒が上手く行われないと、免疫反応により痒疹が出てくることがあります。そして炎症は脂肪分解が続き毒素がリリースされている間持続することになります。

低糖質食を続けて2週間ほど待てば自然に回復する人もいれば、全く治らない人もいて、ケトン代謝時の体調は優れている、と実感しながら痒疹を理由に低糖質食を諦める方もいるようです。

ケト・ラッシュがでてきたら・・

胆汁酸の正しい分泌には、飽和脂肪を中心とした正しい脂肪摂取が大切です。そして、食物繊維を個人差はありますが、20-40gの中で自分に適切な摂取量を探してみるとよいと思います。

色素性痒疹は皮膚に色素を沈着させますので、美容を優先とした短期間の回復を目指したい場合は、とりあえず、糖質制限をゆるくし、皮膚科で処方してもらうとよいでしょう。一時的に症状の回復はあっても、ケトーシスが続くと再発するケースもありますので、薬では根本的な解決には至りません。

自然に回復したい場合はまず糖質量を上げケートーシスをゆるやかにし、脂肪分解のペースを抑えるとよいです。100~150gを目安にするとよいです。1週間ほどで痒疹はひいていきます。

そこから、再度糖質量50g以下のケトンダイエットを試みる時は、食物繊維と脂質の摂取量を調整していきながら、ケトーシスでも痒疹がでないレベルを徐々に糖質量を減らしながら探していくとよいです。

いずれにせよ、毒素がある程度排出されれば、痒疹は止まると考えます。

福岡県 I さんのケース

ケト・ラッシュの症例を福岡でケトンダイエットを実践していた I さんからケース紹介のお許しを頂きましたのでご紹介させていただきます。I さんは妊娠前にケトンダイエットを実践していましたが、妊娠中は少し緩めの100-150gの低糖質食。出産後1年となる最近糖質30gのケトンダイエットを再開したところ、この症状があらわれました。

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Iさんはは薬を使わない自然な手段による回復を望み、摂取糖質量を100gまで戻したところ、痒疹は減少し、色素沈着もだんだん少なくなってきました。

再度30gの糖質量でケトンダイエットを始めたところ、再発はしていません。食生活で前回と違う点は、オメガ3(EPA)摂取を目的に魚貝類やサプリを摂取しているということです。(このオメガ3は必ず良質のものを、しかも摂りすぎないことが重要です)

色素沈着は皮膚のターンオーバーが活発になる食事で解決していけます。

I さん、お写真と体験情報の提供ありがとうございました!ケト・ラッシュはとても稀な現象ですので、なかなか体験を聞くことができないのですが、この情報から価値をえる人は必ずいると思います。すべてはN=1から始まります。

ケト・ラッシュを理由にケトン代謝を諦めるのはとても勿体ないことです。試行錯誤しながら、ご自身にあった糖質・ケトンのハイブリッドバランスを見つけていきましょうね。

2件のコメント

  1. 炎症ヒスタミンが生成されての湿疹ならばナイアシンでヒスタミンを放出する、というのはどうでしょうか?
    わたしも糖質制限でなのか両脇腹の辺りに湿疹がでて昨日ナイアシンフラッシュをしたら湿疹の箇所が赤く火照り、数時間後痒みが消えました。

  2. こんにちは。
    実際に胸や背中に記載の症状がこまっており、非常に参考になりました!
    ありがとうございます☆

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