動物食のオメガバランスを考える時、
「自然な環境で育てられた動物はオメガ3の割合が高い。」
「工業生産的に育てられた動物はオメガ6の割合が高い。」
↓
「できるだけ自然に育てられたものを食べよう。」
まずここの理解があれば良いと思います。
しかし、栄養や食材の最適化、究極化を目指す時、何を考えればよいのでしょうか?
○○のお肉が最善だと仮定した時に、その食材を毎日食べる覚悟がある方や、より食材にこだわりたい方が、その主張を評価する時に、どんな質問をすればよいのでしょうか?
動物食のωバランスに関して考えるのは久しぶりなので、資料のアップデートも含めて自分なりの整理をしてみたいと思います。
動物脂肪のωバランスはその動物の食物によって大きく異なります。
動物が工業生産されている場合、エサは標準化されており、異なるのはトウモロコシ、麦、大豆、米、その他原料の配合ぐらいです。
ところが、より自然な環境で育てられている場合、その変数は無限になります。食物の内容を決めるのは、その動物がいつ、どこで、どのように飼育されているか、だからです。
地域によって気候が異なり、そこで繁殖している植物の種類が異なります。植物によって含有されるω3量が異なります。
屠畜される直前(最も脂肪を蓄える時)がどの季節なのかで、生えている植物や成長段階、存在する餌となる虫の種類や多さも決まってきます。
また、どのカット( 部位)の脂肪酸組成を調べているのか、どの品種を調べているのかによって、脂肪の量や脂肪酸組成は異なります。
自然に育てられた動物達のオメガ3が高いことは様々なエビデンスで証明されていますが、その研究は世界各地域で行われているので、結果も様々です。
中には解釈を一ひねり加えて「 グラスフェッド がグレイン(穀物)フェッドよりも健康であるという科学的根拠はない」と結論した研究も複数あります(1)。
さらに鶏は固有種に近いスロー・グローイング(Slow-Growing)と、収穫高のみを目的に成長スピードを最大化させるために交配と遺伝子組換えを重ねられたファスト・グローイング (Fast-Growing) の品種があります。
私たちが普段食べているのはこのファスト・グローイングの鶏です。しかし、ケージ(CAFO)で育つことを前提に作られた鶏を研究目的で野原を走らせ、脂肪酸組成を測ることに、どのような実用性があるのでしょうか?
エビデンスは応用可用性があってはじめて意味を持つのですが、どれだけ厳密に設計された試験でも、生活への応用ができなければ、科学と生活はつながりません。
飼育法によるωバランスの最適化を求めてエビデンス漁っても、探せば探すほど多様な結果に遭遇します。
一般的な自然科学の研究は、人工の環境の中でその結果を観察します。
設計された入力そのものが多様な自然であればそ結果も多様になります。
しかし、その中でも傾向というものは存在します。
「この動物食材はこのωバランス」
という絶対的な答えはないことを前提に、そんな傾向を考察していきます。
動物食のωバランス シリーズ
(1) 単純ではない動物脂肪酸組成研究の比較
(2) 動物によって異なる脂肪酸組成
(3) 反芻動物
(4) 豚
(5) 鶏
1. https://animalscience.tamu.edu/2013/12/07/ground-beef-from-grass-fed-and-grain-fed-cattle-does-it-matter/