このセクションでは反芻動物、つまり胃を4つ持ち、草を消化してアミノ酸と脂質を腸内で作り出す、牛と羊を見ていきます。
草を食べて飼育されている反芻動物をグラスフェッド (牧草飼育 )、穀物肥育されている動物をグレインフェッド (穀物肥育) と呼びます。
グラスフェッドとグレインフェッドのオメガバランス比較の研究は数多くあり、その結果も様々です。グラフには数字が必要なので、あえて一つづつ研究を選んで作ってみました。
牛肉や羊肉など、反芻動物のお肉のωバランスにこだわるのであれば、穀物ではなく牧草を与えられたお肉を選ぶと良いです。
2010年の7つのグラスフェッドビーフ研究を比較したレビュー研究でも、ω6 / ω3 の値は
グラスフェッドで1.44~3.72 (ω3が21%~41%)
グレインフェッドで3.57~13.6 (ω3が7%~22%)
と、かなり大きな幅がありました。
これは先にも述べたように、自然環境の食べ物は季節や気候、草の品種ミックスなどにより異なり、食物におけるω3の含有は異なるからです。
また同じ「グラスフェッド」でも動物たちが置かれている設定が同じだとは限りませんね。
グラスフェッドは当然放牧されているだろうと思われていますが、放牧されずに牛舎の中でサイレッジや干し草を与えられる場合もあります。① それでも、餌は草なのでグラスフェッドです。
また放牧環境に置かれている牛さんが夜は肥育場で穀物を食べるケースもあります。また野原の中に偶然オメガ6含有の高い豆類が多く繁殖しているケースもあるでしょう。②
これらの飼育条件の変化は食餌に含まれるω3、ω6の割合に影響します。
このデータでは、グラスフェッドであれば牛肉も羊肉も同レベルのωバランスを持っています。
グレインフェッドに関しては羊さんのωバランスが牛さんのそれより優れていました。これはおそらく、フィニッシング期間の違いが反映されているでしょう。反芻動物の飼育は離乳後は必ず牧草から始まり、穀物肥育期間(フィニッシング)を経て出荷されるからです。フィニッシング期間が長ければω3の含有量はより低下していきます。
このデータからだと、グラスフェッドならどちらでもよい、グレインフェッドなら羊さんを、となりますが、これも動物さんたちの環境のことがわからない限り、牛肉や羊肉のどちらがよいのか・・とはわからないですね。
ただ・・・
現在の日本で流通されている牛肉の99%以上は穀物肥育で、グラスフェッド牛などは栄養や環境に意識が向いている消費者しか食べません。
しかし、輸入されている羊肉の半数はグラスフェッドが主流のニュージーランド、もう半数は最近では穀物肥育も多くなってきているオーストラリアです(1)。
つまり、羊を選べばグラスフェッドの確率が半分以上で、ω6の摂取量が最も少なくなりωバランスでは最適と言えます。
独り言:個人的な嗜好では・・・ωバランスの含有よりは、頻度バランスが重要で、牛8:羊2ぐらいで食べているのがしっくりきています。ラムは大好きです~
動物食のωバランス シリーズ
(1) 単純ではない動物脂肪酸組成研究の比較
(2) 動物によって異なる脂肪酸組成
(3) 反芻動物
(4) 豚
(5) 鶏
1) https://www.customs.go.jp/hakodate//content/ram200412.pdf