本日「飽和脂肪酸は体に悪い」とのヘッドラインでAFPの記事がYAHOO ニュースのトップに掲載されていました。
この主張はケトン代謝を行う方には全く意味がないことを以下お伝えいたします。
この記事は次の点でとても影響力が強く、大きな健康被害を及ぼすと感じています。まず、もっとも権威のある医学誌であるJAMAからの発表であること。そして、有名なハーバード大院の研究者による論文であること。そして 126,233人という大きなサンプルに基づいた結論であることです。
この研究のより詳しい内容はハーバードガゼットのこちらの記事
Unsaturated fats linked to longer, healthier life
Unsaturated fats linked to longer, healthier life
第一に、被験者の代謝モードの違いによって、飽和脂肪酸は摂取後の代謝のされ方が違います。この記事の研究は摂取脂質の種類と健康データの相関を見ているだけで、その被験者の大多数は糖代謝で生きています。
しかもこの研究のデータである Nurses’ Health Study は1976年から、Health Professionals Follow-Up Studyは1986年から開始されており、米国民が糖質に偏重した米国栄養ガイドラインに大きく影響され、穀物由来の精製食品、加工食品を大量に食べ始めた時期と重なります。
つまり、高度な糖代謝を行うインスリン分泌が異常に高い個体が(一般人のことです)飽和脂肪酸を摂取すると、その脂肪は消費されることなく体脂肪として蓄えられ、肥満や糖尿病、そしてこの記事でも問題になっている心臓病へと着実に進行します。この意味では、この記事の研究は間違っていません。
しかし、この主張を「人間」全体に当てはめるべきではありません。代謝モードの違いにより、脂質の代謝は異なり、ケトン代謝を行う時間の長い人達にとっては、飽和脂肪酸は良質の脂質です。
今後は被験者の代謝モードの違いによって、飽和脂肪酸摂取が死亡リスクに与える影響がどう変化するのか、に焦点を当てた研究に期待しています。
第二に、この記事の研究は2つの「 食事、生活スタイル、健康などに関するアンケート調査に基づく」ものです。これはアンケートの設問をどう解釈するのかという前提によって、その結果が大きく違ってきます。
それぞれの団体のHPに行けばそのアンケート内容を見ることができます。
例えば、Health Professionals Follow-Up Studyの2014年版はこちらで見ることができます。
https://www.hsph.harvard.edu/hpfs/pdfs/14L.pdf
https://www.hsph.harvard.edu/hpfs/pdfs/14L.pdf
全ての怪しい点をあげていくときりがないのですが、例えば
- 「クリーム」の分類は植物系か動物系か
- 「肉」や「野菜」はどのように調理したのか
などはとても疑問がわく項目ですね。
一般回答者が市販のコーヒークリームや生クリームが乳製品ではなく植物油でできていることを知っているのでしょうか?またこれらの回答がどのようにデータへと変換されているのでしょうか?
肉はステーキで食べることができればよいですが、一般的米国人の肉食は揚げ物や植物油脂での調理がほとんどです。肉由来の脂肪がよくないとしていますが、加熱調理に使った植物油脂を考慮しているのでしょうか?
また、記事ではトランス脂肪酸の健康に及ぼす影響が最も深刻だとしながら、飽和脂肪酸を減らし不飽和脂肪酸の摂取量を増やしましょうと言っています。市販の不飽和脂肪酸の植物油はトランス脂肪酸が含まれていることに対し全く無知な主張です。
飽和脂肪酸は高品質の栄養であり、エネルギー源である。この真実を多くの方に知ってもらいたいですね。