ローカーバー達を震撼させたリサンティ博士の研究
リサンティ博士によるこの一連の研究のテーマは、「リバース・ワールブルグ効果」です。つまりワールブルグ効果が逆方向に起こっている、ということです。
ワールブルグ効果
リーバース・ワールブルグ効果
乳がん細胞と線維芽細胞を使った実験
オートファジー
試験への疑問
- ネズミを使った実験ではマウスの食事に関しては触れられていません。マウスがケトジェニックだったのかそうでないかは重要な変数です。もしマウスが高糖質体質であった場合、ケトン体はブドウ糖に優先して代謝されますので余剰となったブドウ糖がガン細胞の成長を起こしたのではないか?
- マウスのケトン体濃度がデータで提供されていません。毎日大量注入されるケトン体がケトアシドーシスを起こすようなレベルであれば、すでに異常な試験環境設定です。
- 研究はMDA-MB-231という乳がんの細胞株に限られており、その他のガン細胞でも同様の結果がでるのかは疑問です。また、同チームの別の試験ではこの細胞株のケトン体利用酵素を亢進させたものが使われており、ケトン体代謝が亢進した特殊な細胞である可能性があります。(”Similarly, we generated MDA-MB-231 human breast cancer cells overexpressing the key enzyme(s) that allow ketone body re-utilization, OXCT1/2 and ACAT1/2.”)
- ケトン体は肝臓、腎臓、アストロサイトなどで生産されることが知られていますが、肝臓以外の臓器での生産はいずれも少量です。線維芽細胞がガン細胞を成長させるだけのケトン体を生産する力があるのか?
- また、この研究では繊維芽細胞が正常細胞として使われていますが、繊維芽細胞以外の正常細胞が酸化ストレスにより簡単にケトン体生産やオートファジーなどを行うのか?全てのガン細胞が繊維芽細胞に囲まれているわけではありません。
- ガン細胞に栄養を供給する線維芽細胞が解糖でピルビン酸からケトン体を生産すると記されていますが、生化学的にそのようなことが本当に可能なのか。少なくとも生化学の教科書にはそのような現象が起きるとの記述はありません。
- リバースワールブルグ効果におけるガン細胞は糖代謝もケトン代謝も可能ですが、その成長には周囲の支援細胞が必用です。これらの細胞はワールブルグ効果によってミトコンドリアを持っていません。ですので、ケトン体を主燃料にすることで、ガン細胞の成長を助ける過剰な栄養供給を遮断することになるのではないか。しかし、リサンティはガン治療にケトジェニックダイエットを用いることを否定しています。
私達は食事でなにができるのか
リバース・ワールブルグ効果にて、ガン細胞は酸化ストレスにより正常細胞を従属化していきます。人間の細胞は本来、このような酸化ストレスにも強いはずです。また、酸化ストレスをまき散らかすガン細胞を作るのも酸化なんですね。
酸化されやすい細胞はどういう細胞なのか、酸化しにくい細胞をどのように作るか、そのような知恵を食事に応用していくことは大いに可能です。
Ketones and lactate “fuel” tumor growth and metastasis
Evidence that epithelial cancer cells use oxidative mitochondrial metabolism
Cell Cycle. 2010 Sep 1; 9(17): 3506–3514.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3047616/
Ketones and lactate “fuel” tumor growth and metastasis: Evidence that epithelial cancer cells use oxidative mitochondrial metabolism.
Cell Cycle. 2010 Sep 1;9(17):3506-14. Epub 2010 Sep 21.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3047616/
Power Surge: Supporting Cells “Fuel” Cancer Cell Mitochondria
Cell Metabolism Volume 15, Issue 1, p4–5, 4 January 2012
http://www.cell.com/cell-metabolism/fulltext/S1550-4131(11)00470-0
Anti-estrogen resistance in breast cancer is induced by the tumor microenvironment and can be overcome by inhibiting mitochondrial function in epithelial cancer cells.
Cancer Biol Ther. 2011 Nov 15;12(10):924-38. doi: 10.4161/cbt.12.10.17780. Epub 2011 Nov 15.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3280908/
Adipocytes promote ovarian cancer metastasis and provide energy for rapid tumor growth
Nature Medicine 17,1498–1503 (2011) doi:10.1038/nm.2492
http://www.nature.com/nm/journal/v17/n11/abs/nm.2492.html?lang=en
とても勉強になりました。
ケトン体による食事療法を広く広めたいです。
するとメトホルミンを服用しながらケトン状態を維持するのが今の所一番マシな方法かもしれませんね。