鶏肉のωバランスの改善はさらに複雑です。選択肢がほとんどないからですね。
シリーズの冒頭でも触れましたが、鶏の多価不飽和脂肪酸含有も約20%です。牛や羊などの反芻動物の約4倍ですので、ωバランスの影響は大きいですね。
鶏のω3比を高めるには二つの方法が考えられます。一つは、ω3オイルの栄養補助。二つ目は、パスチャーレイズド(Pasture-Raised)です。
直接ω3オイルを餌に混ぜるか、草や葉を食べるしかありません。
鶏の健康や福祉を実際に改善しているかはともかく、マーケティングで使われている 育て方を表す ラベル用の言葉がいくつかあります。
「ケージフリー」、 「オーガニック」 、「バーンレイド」はそれだけでは ωバランスには影響しません。餌に関する制約がないからです。
唯一 「フリーレンジ」 のみがωバランスを改善する可能性があります。
「フリーレンジ」 鶏が小屋の外に出ることが可能なことを意味しますが、それでも
- 植物がどれだけ生えているのか(緑がない土だけのパスチャーではないか)
- 鶏がパスチャーでどれだけ植物を食べるのか
によっては、ωバランスの改善幅は制限されます。陸におけるω3の源は植物だからです。
鶏卵と鶏肉におけるパスチャード(放し飼い)とコンベンショナル(Conventional 基本はケージ)のωバランスを比較してみました。鶏肉と卵はそれぞれ別の研究からのデータです。
パスチャーにアクセスがあっても無くてもω3含有は低いことがわかりました。パスチャーレイズドとコンベンショナルを比較した研究がスロー・グローイングの品種のものしかみつからなかったので、ファストグローイングの研究も見てみたいです。
この研究のω3比は直感的に低すぎると感じたので、他の研究を見てみると、あるパスチャーにアクセスのある鶏のモモ肉のω3は約10%でした。この研究はパスチャーとコンベンショナルを比較したものではありませんので今回は使用しませんでした (1)。
放し飼いを選ぶ理由は他にもたくさんあるのですが、「鶏であればパスチャーレイズドを選ぼうね」と言っても、ωバランス的にはあまり違いがないことがわかります。
卵はω3の含有が少し高くはなりますが、それでも対ω6に対する割合は僅かです。これでは、卵や鶏肉を食べれば食べるほど、ωバランスは悪くなりますね。
ここまでシリーズで動物食のωバランスを見てきました。
パレオダイエットのコミュニティでは、ω6 : ω3 の割合は1:1~4:1が最適だとされています。しかし、魚介を食べることができた民族以外は、 陸上の食べ物のみで 1 : 1 を実現するのはとても難しかったのではないのでしょうか。
「サラダ油は使っていないので、ω6はほとんど食べてないから安心」
こう思っている人は多いのではないかと思います。
確かにサラダ油を使わないだけで、ωバランスは大幅に改善されますが、 ω6 : ω3 を4 以下にしていくには、動物食に気を使い、ω3を栄養補助で補わないと実現できないかもしれません。
動物食のωバランス シリーズ
(1) 単純ではない動物脂肪酸組成研究の比較
(2) 動物によって異なる脂肪酸組成
(3) 反芻動物
(4) 豚
(5) 鶏
1) DOI: 10.1017/S175173111000176X