東京工業大学の生物学者、大隅良典教授がオートファジーの仕組みの解明でノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
オートファジーとは「自らを食べる」という意味があります。Autophagy=Self-Eating
生体は常に分解、修復、再生を繰り返しています。この自動機能は完全ではありませんので、時にはいらないものや、害になるものを作ってしまいます。
細胞の中にはリソソームという生体膜で包まれた小器官があり、これが細胞内のごみを食べてアミノ酸へと消化します。このアミノ酸は体中に輸送され、身体の構造の一部として再利用されます。
オートファジーとはつまり
若返りと成長
の活動のことです。
これが正常に働いていれば、腫瘍の形成や細胞の細菌感染も防いでくれます。
そんな嬉しいこと、どうやったら起こすことができるのでしょうか?
とても簡単なのです。
オートファジーを発動させる条件は飢餓、運動、急性ストレスなど。つまり、身体がストレス下に置かれた時にその生命にとって過酷な条件を乗り越えるために働く仕組みです。
ところが、そんなストレスを感じずにオートファジーを発動させることが可能です。
これらの条件に共通することがあります。
飢餓状態になるとケトン体が発生します。
ハードな運動を30分続けるとケトン体が発生します。
精神的ストレスでも外傷ストレスでも食欲がなくなってケトン体が発生します。
ケトン体でオートファジーが発動するのです。そして、ケトン体はケトンダイエットを行うと簡単に作れます。
ケトンダイエット(KD)とオートファジーに関する研究では、ケトン体がSIRT1(サーチュイン遺伝子の活性化により合成されるタンパク質)を活性化し、mTORを抑制することで脳細胞や肝細胞のオートファジーが起こるとされています。
例えば脳細胞におけるオートファジーが働くと・・・活性酸素を作り過ぎのミトコンドリアを消滅させたり、神経変性を起こすタンパク質を除去したり、神経変性の予防をしたりしてくれます。つまり、認知症などにはならないわけですね。
オートファジーの前提となっている飢餓を経験することは生物にとって生命力を高めてくれるまたとない機会ですが、同時に体内の栄養素も奪われてしまいます。
ケトンダイエットは飢餓状態時に作られる代替燃料だけでなく、細胞へのシグナルとしてのケトン体作ることで、身体へダメージを与えることなく、細胞内のお掃除=若返りを実現してくれます。
Ketosis May Promote Brain Macroautophagy by Activating Sirt1 and Hypoxia-Inducible Factor-1
Medical Hypotheses 85(5) · August 2015
Ketone bodies stimulate chaperone-mediated autophagy.
J Biol Chem. 2005 Jul 8;280(27):25864-70. Epub 2005 May 9.
Ketogenic essential amino acids replacement diet ameliorated hepatosteatosis with altering autophagy-associated molecules.
Biochim Biophys Acta. 2013 Oct;1832(10):1605-12. doi: 10.1016