油彩画と酸化

今日は高校時代の話をしたいと思います。

僕の通った高校では一年に1回は芸術系のコースを履修しなければ卒業できませんでした。

僕は写真と音楽制作と油彩画のコースをとりました。

こちらがその校舎です。油彩画の授業は左の建物の地下1階の教室で行われていました。

水彩画は留学前に小学校でも中学校でも描いた記憶がありますが、キャンバスを布と接ぎ木で作ることから始める油絵の学習は目にウロコなことであふれた経験でした。

水彩画というのは絵具を水で溶いて紙に描きます。水は時間とともに乾燥していきますので、顔料と接着剤が紙に残り、絵が完成します。

油彩画は顔料を乾性剤というオイルに溶いてからキャンバスに描いていきます。水彩画は水が蒸発して乾燥することで色が定着しますが、油絵は乾性剤が固まることでキャンバスに定着するのです。

どうして液体であるはずのオイルが固まるのか。それは乾性剤が酸化し、表面から内側に重合(酸化による結合が進むこと)していくからです。

当時使っていた乾性剤はホルベインのペンチングオイル。今でも一番使われている乾性剤だと思います。

まずは絵の表面が酸素と結合することで酸化がおこり被膜ができます。この被膜が時間とともに内側へと結合しながら進んでいくのです。

重ね塗りをするときはしっかり乾燥してからでないとヒビワレの原因になると言われました。違う起点から固化が進むのですからあたりまえですよね。

あと、温度が高い時の方が乾燥の速度が速く、半年ほどで完全に固まることや、直射日光に当てるのは良くないが光のある場所に保管していた方が乾燥が早まることも教えてもらいました。

一度固まると、水彩画と比べるとはるかに耐久性が高く、この酸化の力があるからこそ、後代に芸術を制作時の品質そのままで伝えることができることも習いました。

君たちの絵も未来の子孫に見てもらえるかもしれないよ!と。

また乾性油は酸化反応が最も高い亜麻仁やくるみから作られることも。

なんて素晴らしい特徴をもったオイルなんだ…

りんごや校舎、そして当時大好きだった彼女を描いて・・・似てないと言われました。( ̄Д ̄;) ガーン

 

15年後・・・

亜麻仁から作られたオイルが食用油として小売店に並ぶようになりました。

それから、食用油としてだけでなく、健康食としても効果があるオイルとして紹介されるようになりました。

亜麻仁油って、

乾燥しやすいオイルだったよね?

乾燥というか酸化するんだよね?

そして、どんどん固まっていくんだよね?

その固まり、ちょとやそっとじゃ崩れないんだよね?

だってダビンチとか500年前だよ・・

どうしてそんなものを食べるのだろう・・・

とても不思議でした。

くるみは糖質が低いので糖質制限時のナッツとしても人気がありますが、酸化しやすい多価不飽和脂肪酸を70%以上含むナッツです。

雰囲気のいいワインバーでチーズと一緒に出てくると・・・はい、食べてしまいます。美味しいですよね~。

でも僕は何と引き換えにしているか、覚悟しながら食べています。

亜麻仁油は・・・また油絵を描きたい相手を見つけた時に使ってみようと思います。

 

 

 

3件のコメント

  1. なんか、ロマンチックな浩二さんがいますね〜^_^
    素敵です。私も何でも始めからが楽しいです。
    始めを知っているっていいですね!
    キャンパスを作るって良い時間です。

  2. とても素敵なモノローグですね♪

    心情と論理性とが爽やかなハーモニーを奏でています。

    近代欧米に由来する精神性の中でも、そのもっとも上質なレベルを学得されていることに敬意を表します♪☆⌒(*^∇゜)v

  3. 化学かじってた者です。。
    素敵な学校だったんですね!羨ましいです。

    ところで不飽和脂肪酸は、体内を酸化する物質と反応して、代わりに酸化されてくれるから体に良いとかだった気がします。

    常温で既に固まってる動物性のものよりも、魚や植物性の油の方が不飽和脂肪酸の割合が多く健康に良いはずですよー

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