オメガ3を摂るには水生動物を食べよう:αリノレン酸のEPA,DPAへの変換率は極端に低い


オメガ3

使い方によっては認知症を予防したり、逆に癌を悪化させたりする栄養素。栄養に関心が高い人でも使い方を知らない人が多すぎる栄養素です。

世の中には多くの栄養に関する誤解が蔓延していますが、このオメガ3もその一つです。

オメガ3の概要

食品から摂れるオメガ3には主に

(略:英名:日名)

ALA:Alpha Linolenic Acid :αリノレン酸
EPA:Eicosapentaenoic Acid: エイコサペンタエン酸、
DHA:Docosahexaenoic Acid: ドコサエキサエン酸

があります。

オメガ3は体内で合成することが出来ない必須脂肪酸で、食事から摂取しないといけない、といわれています。

オメガ3は全て多価不飽和脂肪酸という劇的に酸化しやすい脂肪酸です。

ALAは主にエネルギーとして、EPAは炎症抑制として、DHAは細胞膜や神経細胞の構成物として、主な役割があります。

人間はエネルギー生産に使える多種の脂肪酸を食事から摂取しており、ALAは特に必要ではありません。EPA、DHAはその他の脂肪酸で代替ができないため食事から摂取することが重要です。

ALAは主に亜麻仁やエゴマなど地上植物に含まれています。EPA,DHAは主に水生動物に含まれています。

転換率に関する誤解

さて、ここを知らない人が驚くほど多いのですが…

エゴマ油や亜麻仁油などで市場に出てきたのは、それぞれに約50%含まれるALAが体内でEPAに、そしてDHAに転換される、と信じられてきたからです。

1970年代後半からネズミを使ったALAの摂取が脳におけるDHAの増加や学習能力の向上との相関を検証した研究が次々と発表されました。1990年代に入ると各国の政府機関がALAを奨励摂取量とともに必須脂肪酸として採用し始めます。我が国でも「目安量」として設定されています。

1990年代には多くの人体による研究が行われてましたが、いずれも転換率は驚くほど低く、一体何のためにALAを摂らなければいけないのか不思議でなりません。

しかも、転換されなかったALAは非常に酸化しやすい脂質で、体内の酸化を促進します。

つまり、ALAをエゴマや亜麻仁で摂っても無駄であるどころか、大変危険なのです。

役に立つオメガ3、すなわちEPAやDHAを摂取するにはそれらを豊富に含む魚や貝を食べれば良いのです。

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摂取比率に関する誤解

もう一つの誤解は、オメガ3とオメガ6の理想摂取比率に基づいた、オメガ3を大量に取らないといけない、という主張です。

オメガ3とオメガ6の理想摂取比率は1対1から1対4とされています。現代人はオメガ6の摂取量が大きいのでオメガ3をたくさん摂取して、理想比率に近づけましょう、といわれています。

オメガ3は確かに体内合成ができない必須脂肪酸ですが、だからといって大量に摂取しないといけないわけではありません。

オメガ3の身体に占める割合をご存知ですか?成人で約3%以下です。使えないオメガ3を大量に摂ったところで酸化しやすい脂質が体内に増えるだけです。

他にもこの誤解が生む弊害はいくつかあるのですが、ここまででもALAを亜麻仁やエゴマなどの地上植物から摂ることの危険性を理解して頂けると思います。

サイエンスの世界では地上植物性オメガ3が流行る以前、すでに1990年代から常識となってるこの事実が、どうして私達の生活に反映されないのでしょうか?

 

ALAの人体における転換率についての研究

Can adults adequately convert alpha-linolenic acid (18:3n-3) to eicosapentaenoic acid (20:5n-3) and docosahexaenoic acid (22:6n-3)?
Int J Vitam Nutr Res. 1998;68(3):159-73.
「ALA からEPAへの転換率は 6%、DHAへの転換率は 3.8%。オメガ6の摂取量が高いと転換率は40-50%以上減少する。」

Bioavailability and potential uses of vegetarian sources of omega-3 fatty acids: a review of the literature.
Crit Rev Food Sci Nutr. 2014;54(5):572-9. doi: 10.1080/10408398.2011.596292.
論文評価にみる植物由来のオメガ3脂肪酸の生可用性と利用可能性
「この10年間に発行された10の論文のうち、7つの介入研究においてナッツや種子由来のオイルはDHAに全く変換されないと報告された。」

Francois CA, Connor SL, Bolewicz LC, Connor WE. Supplementing lactating women with flaxseed oil does not increase docosahexaenoic acid in their milk. Am J Clin Nutr. 2003;77(1):226–233.
「ALA 10.7g/日を摂取は授乳婦の母乳中のDHA量に変化を及ぼさなかった。」

Efficiency of conversion of alpha-linolenic acid to long chain n-3 fatty acids in man.
Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2002 Mar;5(2):127-32.
「これまでの研究ではALAからDHAへの変換率は5%以下であることを示している。」

この論文は28のALAからEPA、DHAへの転換率の研究を比較し、ALAの摂取が体内DHA量にほとんど影響を及ぼさないことを示しています
alpha-Linolenic acid supplementation and conversion to n-3 long-chain polyunsaturated fatty acids in humans.
Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 2009 Feb-Mar;80(2-3):85-91. doi: 10.1016/j.plefa.2009.01.004. Epub 2009 Mar 9.

 菜食主義、魚嫌い

魚や貝などの水中動物を食べれない方は、植物由来のALAこそが唯一のオメガ3摂取源であり、EPA、DHAをALAからの転換に頼らないといけません。

この回避法としては海藻由来のオメガ3があります。海藻の中でもDHAを多く含むのは食物連鎖の始まりに存在する微細藻類です。魚貝類にDHAが多いのは水中における食物連鎖の上流に存在するからです。

単純に魚が嫌いな方は魚油をサプリで摂る方法があります。フィッシュオイルと呼ばれるサプリメントです。しかし、後にも述べますが、魚油サプリは摂り過ぎるとやはり酸化を起こします。特に血中LDLの酸化がすすみ、その結果は動脈硬化や心疾患で現れてきます。オメガ3においては、摂取量は少なくても多すぎても問題なのです。

魚油サプリのもう一つの問題は市場における半数以上の商品がすでに酸化していることです。魚油はオメガ3の中でも不飽和度が高く、,酸化を起こす二重結合がEPAで5つ、DHAが6つあります。この素材を酸化させずにサプリ化するには高度な技術が必用ですが、多くの商品がすでに酸化した状態で出荷されていることが研究でわかっています。

Lack of benefit of dietary advice to men with angina: results of a controlled trial.
Eur J Clin Nutr. 2003 Feb;57(2):193-200.

Effect of n-3 fatty acids in glycemic and lipid profiles, oxidative stress and total antioxidant capacity in patients with the metabolic syndrome
Arq Bras Endocrinol Metabol. 2010;54(5):463-9.

Fishing for answers: is oxidation of fish oil supplements a problem?
J Nutr Sci. 2015; 4: e36.

オメガ6摂取量

ALAからEPA、DHAへの転換には①分子を長くする酵素、②不飽和化する酵素が必用です。このうちALAからEPAへの不飽和化酵素はオメガ6の代謝と共有されていますので、大豆油やコーン油に多量に含まれるオメガ6=リノレン酸を多く摂取すると、この転換率が大幅に低下します。オメガ3のALAからの転換率を高めるにはオメガ6の摂取制限が必用です。

地上動物由来のオメガ3

もしオメガ3が水中動物からしか摂れないのであれば、水辺にアクセスのない地域で生活していた人類を含むあらゆる動物はどのように健康を維持していたのでしょうか?ALAを含む地上植物を食べている草食動物にはALA, EPA, DHAともに含まれています。動物のなかでALAはEPA,DHAへと転換され体脂肪に蓄積されるのです。

そして草食動物を捕食することで肉食動物も必要なオメガ3を摂取することができたのです。人間も牧草牛、野生の豚などからであれば有効なオメガ3を摂取できます。残念ながら現在の畜産はほぼ全てがオメガ3を僅かしか含まないトウモロコシなどの穀物で育てられていますので、一般に手に入る食肉からはオメガ3をほとんど摂取できません。

A review of fatty acid profiles and antioxidant content in grass-fed and grain-fed beef
Nutr J. 2010; 9: 10.

調理法

DHA目的の魚はできるだけ生で頂くとよいですね。 DHAは青物の魚に豊富に含まれると言われます。イワシ、あじ、サンマなどです。

秋はサンマの季節ですので、和食でサンマの刺身をいただけます。サンマの塩焼きも食べます。そこで考えるのは、熱調理した場合のDHAはどの程度残るのかということですね。

魚油を150度で30分間熱した研究では、EPAは18.5%、DHAは15.5%しか残っていませんでした。 しかしオレガノエキストラクトを1%混ぜたオイルはEPAが38.8%、DHAは 44.7% も残っていました。5%ではEPAが69%、DHAが65.9%残っていました。ハーブの抗酸化物質の力はすごいですね・・

芳ばしい香りのサンマの塩焼き、限られた季節に週に1回ぐらいは食べようと思います。サンマの味を高めてくれるあらゆる抗酸化物質のアイデア考えてみたいですね。

S.D. Bhale, et.al, 1 November 2007, Oregano and Rosemary Extracts Inhibit Oxidation of Long-Chain n-3 Fatty Acids in Menhaden Oil

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