ココナッツオイル、もしくは飽和脂肪酸に対する批評を行っている記事をなんでもよいのでご覧ください。そこに、エビデンスの様に使われている記事や参照には必ずと言ってよいほどAmerica Heart Association (AHA)「米国心臓協会」があります。
そして、AHA以外の学会名がでてくることは非常に稀です。現在では「飽和脂肪酸が心血管疾患を起こす」と言うだけで「かなり古い栄養学で凝り固まってるな」と思われるでしょう。それほど栄養学・生理学は進化していますが、AHAだけは古い主張を変えないのです。
AHAは1924年に6名の心臓外科医によって発足したNPO(非営利団体)で活動は小規模でした。しかし、1940年代にプロクターギャンブル社による150万ドルの寄付により、全国規模の学会組織となりました。
P&Gは今でこそ植物油の事業から撤退していますが、当時は綿花生産の廃棄物から植物油を作り、AHAから「植物油は心臓に健康だ」とする奨励をもらい植物油やマーガリンの販売をCrisco というブランドで展開していました。
AHAはその歴史から多価不飽和脂肪酸を多く含む植物油に対する医学的奨励を与える植物油業界のお抱え学会として発展してきた経緯があります。
現在でも、AHAのスポンサーにはKellogs(コーンフレーク) やNesle (加工乳製品)などの加工食品企業、Coca ColaやPepsi (加糖飲料)などの 大手飲料メーカー、KFCやSubway (植物油)などのファストフード企業、砂糖協会、 The Sugar Association, ユナイテッド大豆委員会、USキャノーラ協会などの業界団体が名を連ねています。その多くが炭水化物や植物油を原料に使用している企業です。
AHAすでには米国政府の栄養政策に最も影響を与える学会となっています。つまり、世界の公衆衛生政策に影響を及ぼすこの学会の社会的責任はとてつもなく大きいのです。
これまで70年間主張し続けてきたことを否定をするのは難しいことは理解できます。しかし、科学が前進するためには、学会は自己否定をともなっても、公正なエビデンス評価を行っていく必要があります。
主張者の利害関係を調べる
科学的主張を評価する時は、主張者の利害関係は調べることは大切です。利害関係があるからといって、主張の内容にバイアスがかかっているとは限りませんが、その可能性は利害の対立がない研究と比べてはるかに高くなります。
そして、AHAによる飽和脂肪酸批判は、科学的批判に誠実に向き合っておらず、矛盾にあふれており、そのバイアスを疑わずにはおれません。
分野は違いますが、物理学者のRichard Feynmanの以下のような言葉があります。
First Principle is that you must not fool yourself and you are the easiest person to fool.
第一の原則は、自分をだましてはならない、自分は最もだましやすいのだ。
科学について考える時には常に戒めとしたい言葉です。
さて、資料1の日本語翻訳文からは省かれていましたが、原文にはこんなくだりがあります。
“It’s not a difficult topic, scientifically,” said Frank Sacks, a professor of cardiovascular disease prevention at the Harvard School of Public Health and lead author of an AHA advisory on dietary fats released last year.
ハーバード大学公衆衛生学部の心血管病予防の教授であり、AHAの問題の報告書の筆頭著者であるフランク・サックス氏は「科学的にはたいして難し話ではない」と言った。
そして、翻訳文には
ミッシェル教授と面識があるサックス教授は、「膨大な数の実験結果が、飽和脂肪酸が悪玉コレステロールを増加させることを示している。ミッシェル教授の主張は科学的で明快だ」
とあります。
ここで証言をしているサックス教授は、ココナッツオイルを毒としたミッシェル教授と同じ大学院の同僚で、しかも、AHAの意見報告書の筆頭著者です。
記事を書く時はもっと第三者的立場の研究者を用意すべきだとは思わなかったのでしょうか。
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ところで、私はココナッツを栽培し、ココナッツオイルを生産し、日本に輸入して販売しています。私がココナッツオイルのことを擁護する時には利害の対立があります。
ですので、私の話は矛盾がないか、注意して読む必要がありますね(^_-)-☆
(1) 複数の同じような主張を展開している記事を読み、問題を定義する
(2) 主張の根拠の有無を確認する
(3) 主張の根拠を評価する: エビデンスの強さ
(4) 誰が主張しているのかを調べる
(5) 迷ったら First Do No Harm 進化生物学的に考える
(6) 直近の研究のアップデート