なぜ同じ日本の食卓でも、太り方が民族で違うのか

今日、学習仲間から、こんな観察を聞かせてもらいました。

彼女の住むエリアは外国から来た人が多く、なかでも中国から来た人がよく目につくそうです。そして街を歩きながら気づいたことがある、と。中国から来た人には、肩からお腹にかけて三角形に広がった体型の人が多い。しかも大人だけでなく、子どもにも。南アジア系と思われる若者は、後ろから見るとすっきりしているのに、横から見ると太鼓腹。韓国から来た人は、わりと体型を保っている印象がある。そして日本人の若い女性にも、まだ若いのにと思うほど太っている人が少なくない、と。

彼女は最後に、こう付け加えました。きっと家庭の食事が影響しているのだと思う、と。

これは、街角のひとつの観察です。統計ではありませんし、そこから誰かを決めつけることもできません。けれど私は、この観察をとても正確だと感じました。というのも、彼女が目で見て取ったことの多くは、体脂肪をめぐる集団遺伝学や栄養人類学が積み上げてきた知見と、驚くほどよく重なるからです。

今日はこの観察を入り口に、同じ日本の食卓を囲んでいても、なぜ太り方が人によって違うのかを、一緒にたどってみたいと思います。先にひとつだけお断りしておきます。これは人種の優劣の話ではありません。祖先がどんな環境を生き延びてきたかが、体脂肪の置き場所の設計図として残っている。その設計図をめぐる話です。

見た目が同じでも、中身は同じではない

まず、体型を語るときに私たちが頼りにしているBMIという物差しから見直してみます。体重を身長で二度割った、あの数字です。

同じ体脂肪の量、同じ年齢と性別で比べたとき、アジア人はヨーロッパ系より、BMIがおよそ2から3ほど低く出ます。オランダの研究者ポール・デューレンベルフらがまとめた比較が、この違いをはっきり示しました1。同じだけ脂肪をつけていても、数字の上では痩せて見えるということです。そして彼らの報告のもう一つの要点は、アジア人といっても一様ではなく、アジア人同士でもこの関係が違う、というものでした。

そんなこともあり、世界保健機関は、二〇〇四年に専門家会合の見解として、アジアの人々にはBMIの基準そのものを下げて考えるべきだと提言しています2。ヨーロッパ系では肥満の目安が三十からとされるところを、アジアでは二十五あたりからすでに健康上の注意が必要になる。つまり、同じ数字でも意味が違うのです。

見た目が同じでも、中身は同じではない。彼女が街で感じ取った違和感の正体は、まずここにあります。

「後ろはすっきり、横から太鼓腹」の正体

南アジア系の若者について、彼女は絶妙な描写をしてくれました。後ろから見るとすっきりしているのに、横から見ると太鼓腹。この一文には、いま最もよく研究されている体組成の型が、そのまま写し取られています。

インドのチッタランジャン・ヤジニックという研究者が、プネという街の妊婦と新生児を追いかけた研究で、ある型を見つけました。インドの赤ちゃんは、身長も肩幅も腕の太さも、あらゆる計測で小さく生まれる。それなのに、体脂肪だけは相対的にしっかりと保たれている。しかもその脂肪は、腕や脚の皮下ではなく、お腹の内側に多い。彼はこれを、痩せているのに脂肪が多い型と呼びました。この型が生まれたときからあり、子ども時代を通じて、大人になっても続いていくことを示したのです3

痩せて見えるのに、脂肪はお腹の内側にある。後ろ姿はすっきりして、横顔だけが太鼓腹になる。彼女が見たのは、まさにこの型でした。

ではなぜ、脂肪がわざわざお腹の内側に集まるのか。ここで一つの見立てが役に立ちます。カナダの研究者アラン・スナイダーマンらが提唱した、脂肪のあふれ出しという考え方です4

私たちの体には、脂肪をしまう場所がいくつかあります。腕や脚、お尻まわりの皮下脂肪は、いわば安全な貯金箱です。ここにしまわれている限り、脂肪は比較的おとなしくしています。ところが、この貯金箱の大きさが、生まれ育った祖先の系統によって違う。南アジア系はこの皮下の貯金箱がもともと小さく、少し食べ過ぎるとすぐ満杯になる。行き場を失った脂肪は、本来たまるべきでない場所へあふれ出していきます。お腹の奥の内臓のまわり、そして肝臓へ。

つまり太鼓腹は、脂肪をたくさん貯め込んだ姿ではなく、小さな貯金箱があふれたサインなのです。貯められる総量ではなく、脂肪をどこに置くかという設計図が違う。同じものを食べても、あふれ始める境目が人によって違うということです。

なぜ祖先ごとに設計図が違うのか

では、この設計図はどこから来たのか。ここで避けて通れないのが、倹約遺伝子という古い、けれど示唆に富む考え方です。

遺伝学者のジェームズ・ニールが一九六二年に唱えたもので、こういう筋書きです。飢えと隣り合わせで生きてきた集団では、食べ物が手に入ったときに、それを効率よく脂肪として貯め込める体質が生き延びるのに有利だった。次の飢えを越えるための備えだからです。ところが、食べ物がいつでも手に入る現代では、その優れた貯蓄能力が、そのまま裏目に出る。かつての生存の知恵が、豊かさの中で重荷に変わる、という話です5

この考えは魅力的ですが、そのまま鵜呑みにはしません。イギリスのジョン・スピークマンは、飢饉による強い選択という前提には無理があると批判し、むしろ捕食者から逃れる必要が薄れた結果として、体重の上限を抑える仕組みがゆるんだのだ、という別の見立てを示しています6。真相はおそらく単純ではありません。それでも、祖先が生きた環境が、いまの私たちの脂肪の置き場所に痕跡を残している、という大枠は揺らぎません。

もう一つ、遺伝の話を優劣ではなく分布の話として捉え直すのに、格好の例があります。肥満と関わる遺伝子として有名なFTOです。九万人を超える東アジアと南アジアの人々を調べた研究によると、この遺伝子のリスク型は、一つ持っているごとの効き目そのものは、東アジアでも南アジアでもヨーロッパ系でもほとんど変わりませんでした。違っていたのは、その型を持っている人が集団の中に何割いるか、という頻度のほうでした。東アジアでは持っている人が少なく、南アジアではもう少し多く、ヨーロッパ系で最も多い7

これは大切な視点です。遺伝子が集団の優劣を決めているのではありません。同じ道具が、どのくらいの割合で配られているかが違うだけなのです。

元の食べ方は、海を越えても続く

ここまでは、生まれ持った設計図の話でした。けれど彼女の観察には、もう一つの層があります。彼女が言い当てた、家庭の食事という層です。

人は移り住んでも、元の食べ方をそう簡単には手放しません。同じ日本にいても、食卓は出身ごとに違う。設計図の上に、この食卓が掛け算されていきます。

中国から来た人の体型について、彼女は子どもにも三角形が多いと言いました。ここには、栄養転換と呼ばれる大きな流れが映っています。急速な経済発展の中で、中国の食卓は、伝統的な食事から、肉や精製した穀物、加工の進んだ食品へと大きく移り変わりました。その結果、子どもの過体重と肥満の割合は、1991年から2011年までのおよそ20年で、11.7%から25.2%へと倍増しています8。子どもに変化が出るのは、家庭の食卓そのものが変わったからです。彼女の、家庭の食事が影響しているという直感は、ここでも正確でした。

一方、韓国から来た人が体型を保っている印象について。韓国は、豊かな国々の中でも肥満の割合が低いほうに位置し続けています。ナムルやキムチといった野菜と発酵食品を中心に、赤身の肉は控えめという食の構成を、世界的な食生活の均質化の波の中でも比較的よく保ってきました。ここで注意したいのは、この違いを遺伝のせいにしないことです。東アジアの人々の遺伝的な設計図は互いに近く、韓国の体型維持は、遺伝の差というより、受け継がれてきた食文化の力によるところが大きいと考えるほうが素直です。

そして、日本の若い女性について。ここには、これまでと向きの違う落とし穴があります。日本には痩せていることをよしとする風潮が強く、BMIの数字だけを見れば、決して太っていない人が多い。けれど、その数字の裏で、筋肉が少なく、お腹の内側に脂肪がたまっている状態が起こり得ます。体重計に乗るだけでは見えないこの状態を、日本の専門家たちも近年あらためて問題にしています9。痩せているように見えることと、体の中身が健やかであることは、必ずしも同じではないのです。

体型は、祖先の生き方の記録

こうして見てくると、街角の観察と科学の知見は、対立するどころか、同じ一つのことを別の角度から照らしていたのだとわかります。

太りやすさは、意志の強さや弱さの問題ではありません。それは二つの層でできています。祖先がどんな環境を生き延び、脂肪をどこに置くよう設計されてきたかという層。そして、その人がいまも受け継いでいる食卓という層。この二つが掛け合わさって、一人ひとりの体型が形づくられていきます。

だとすれば、体型は人種を映す鏡ではなく、祖先の生き方の記録だと言ったほうが正確です。ある集団が飢えを越えて生き延びた歴史、別の集団が守ってきた食卓の知恵。それらが、いま私たちの体に痕跡として残っている。優劣をつけるものでも、誰かと比べるものでもありません。

そして、ここに一つの希望があります。設計図は変えられなくても、その上に何を掛け合わせるかは、自分で選べるということです。自分の設計図がどんな傾向を持っているのかを知り、それに合った食べ方を見つけていく。これは他人の平均に自分を合わせることではなく、自分という一つの事例に向き合うことです。彼女が街角で見つけた違いは、まさにこの、一人ひとりの設計図がいかに違うかという事実を、目に見える形で教えてくれていたのだと思います。


  1. Deurenberg P, Deurenberg-Yap M, Guricci S. Asians are different from Caucasians and from each other in their body mass index/body fat per cent relationship. Obes Rev. 2002;3(3):141-146. PMID: 12164465. 

  2. WHO Expert Consultation. Appropriate body-mass index for Asian populations and its implications for policy and intervention strategies. Lancet. 2004;363(9403):157-163. PMID: 14726171. 

  3. Yajnik CS, Fall CHD, Coyaji KJ, et al. Neonatal anthropometry: the thin-fat Indian baby. The Pune Maternal Nutrition Study. Int J Obes Relat Metab Disord. 2003;27(2):173-180. PMID: 12586996. 

  4. Sniderman AD, Bhopal R, Prabhakaran D, Sarrafzadegan N, Tchernof A. Why might South Asians be so susceptible to central obesity and its atherogenic consequences? The adipose tissue overflow hypothesis. Int J Epidemiol. 2007;36(1):220-225. PMID: 17510078. 

  5. Neel JV. Diabetes mellitus: a “thrifty” genotype rendered detrimental by “progress”? Am J Hum Genet. 1962;14(4):353-362. PMID: 13937884. 

  6. Speakman JR. Thrifty genes for obesity, an attractive but flawed idea, and an alternative perspective: the “drifty gene” hypothesis. Int J Obes (Lond). 2008;32(11):1611-1617. PMID: 18852699. 

  7. Li H, Kilpeläinen TO, Liu C, et al. Association of genetic variation in FTO with risk of obesity and type 2 diabetes with data from 96,551 East and South Asians. Diabetologia. 2012;55(4):981-995. PMID: 22109280. 

  8. Jia P, Xue H, Zhang J, Wang Y. Time Trend and Demographic and Geographic Disparities in Childhood Obesity Prevalence in China—Evidence from Twenty Years of Longitudinal Data. Int J Environ Res Public Health. 2017;14(4):369. PMID: 28362361. 

  9. Ishii S, et al. Diagnosis of sarcopenic obesity in Japan: Consensus statement of the Japanese Working Group on Sarcopenic Obesity. Geriatr Gerontol Int. 2024. PMID: 39253949. 

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