パーキンソン病とケトジェニックダイエット

(2019年10月アッププデート)

同じ認知症でもパーキンソン病はアルツハイマー型認知症と比較して症例は少なく、ケトジェニックダイエットを用いて行われたヒトの臨床試験は多くありません。

しかし、パーキンソン病もアルツハイマーと同じく神経変性が原因です。他の認知症との違いは、神経変性が大脳基底核の黒質という運動系システムを司る部位で起こることです。

初期症状は震えやけいれんや硬直性ですが、進行すると、運動系だけでなく、認知症や鬱など、これまではラットを中心に検証されていましたが、2018年にヒトに対する臨床試験の論文がでてきましたので、2005年に行われていた予備研究の内容とともにお伝えしたいと思います。

2006年に行われた予備研究です。

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「食事誘発性高ケトン発生によるパーキンソン病の治療:実行可能性調査」

ケトンはパーキンソン病(PD)に関係するミトコンドリア電子伝達系酵素複合体Iの活動の欠陥を回避する可能性があります。 7人のPDボランティア参加者のうち5人は、28日間、自宅で「高ケトン食ダイエット」を調理しました。飽和脂肪で不飽和脂肪酸を置換を行うと4人の被験者でコレステロールの増加を防ぐことができました。統一パーキンソン病評価尺度スコアは、ケトジェニックにおいて5つの項目すべてで改善しましたが、プラセボ効果は除外されませんでした。

Neurology 64(4):728-30 · March 2005
Treatment of Parkinson disease with diet-induced hyperketonemia: a feasibility study.

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この研究ではUPDRS「;パーキンソン病統一スケール.」においてスコアの減少がケトジェニック食を最後まで維持することができた患者の全てに起こり、最も大きな減少がおこった被験者ではスコアの81%の減少が観察されました。

次は、2018年に発表された予備的研究です。
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背景:
これまでの予備研究によるエビデンスは、食事内容の操作でパーキンソン病(PD)の運動症状と非運動症状に影響を与える可能性があることを示していますが、理想的な脂肪と炭水化物の比率に関しては異なる結果が存在します。

目的:
PD患者の病院クリニックで、低脂肪・高炭水化物食とケトジェニック食の妥当性、安全性、および有効性を比較する予備的ランダム化比較試験を設計しました。

方法:
研究用食事療法でPD患者をサポートするプロトコルを開発し、患者を低脂肪食またはケトジェニック食療法のグループにランダムに割り当てました。主要な結果の判定は、8週間にわたるグループ間のMDS-UPDRS 試験におけるパート1〜4の変化で行いました。

結果:
47人の患者を無作為化し、そのうち44人が食事を開始し、38人が研究を完了しました(食事を開始した患者の完了率は86%)。ケトジェニックダイエットグループは生理的ケトーシスを維持しました。両方のグループでMDS-UPDRSスコアが大幅に減少しましたが、ケトジェニックグループは、低脂肪グループ(11%の改善)と比較して、パート1でより減少しました(41%の改善 )。尿の問題、痛みやその他の感覚、疲労、日中の眠気、および認知機能障害で最大のグループ間の減少が観察されました。パート2から4の減少の大きさにグループ間で差はありませんでした。最も一般的な副作用は、低脂肪グループでの過度の空腹感、ケトジェニックグループでの断続的なPDの痙攣または硬直の悪化でした。

結論:
PD患者が8週間低脂肪またはケトン食を維持することは実行可能で安全です。両方の食事グループは、運動症状および非運動症状が著しく改善しました。しかし、ケトン体生成グループは、非運動症状のより大きな改善を示しました。

Mov Disord. 2018 Aug; 33(8): 1306–1314.
Low‐fat versus ketogenic diet in Parkinson’s disease: A pilot randomized controlled trial

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この研究では低脂肪食でもケトジェニック食でもパーキンソン病の臨床評価スケールにおいて改善が見られましたが、特にケトジェニック食でより高い効果が見られました。

予備試験では良好な結果が出ていますので、もっと大規模な試験で食事療法によるこの進行性で特効薬が存在しない神経変性疾患に対する効果が検証されることを期待しています。

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