境目に立つ脂肪酸——分けたがるのは、いつも私たち

ラウリン酸、名前の話から始めます。 ラウリンは月桂樹、ラテン語のlaurus(ラウルス)から来ています。勝者の頭にのせる月桂冠の、あの木です。この脂肪酸が最初に月桂樹の実の油から取り出されたので、その名が残りました。名前 … 続きを読む

塩が血管を壊すのではなかった——免疫系が「感染と間違えて」血管を老化させていた

「塩分の摂りすぎは血管に悪い」——これは正しいです。 しかし、その理由として長年信じられてきたメカニズムは、間違いでした。 従来の定説はこうでした。 血液中に余分な塩分(NaCl)が増えると、それが直接血管の内壁を傷つけ … 続きを読む

変異のない、がん ―― 40億年前のプログラムが目を覚ますとき

がん研究の歴史は、長いあいだ「壊れた遺伝子を探す」歴史でした。 どの遺伝子に傷がつくと、細胞が暴走をはじめるのか。 その一点を突きとめ、そこを叩く薬をつくる。 筋の通った戦略で、医療も創薬も、長くこの考えに賭けてきました … 続きを読む

ミトコンドリアは、わざとエネルギーを「漏らして」いる

前回、消えた「8個のATP」は、どこへ行ったのかという記事を書きました。 学校で「38個」と習った数字が、いまでは「およそ30〜32個」に見直されている——その理由をたどると、最後に一つ、意外な行き先が残りました。 漏れ … 続きを読む

「R体」「L体」——サプリのラベルに隠れた、分子の利き手の話

サプリメントの成分表を眺めていて、成分名の頭に「R体」や「L体」、あるいは「D-」「L-」といった小さな文字がついているのを見たことはないでしょうか。 多くの人はそこを読み飛ばします。 けれど、この一文字には、その成分が … 続きを読む

「天然由来」は本当に優れているのか——答えは分子が知っている

商品の裏面に「天然由来」と書いてあると、つい、そちらのほうが良さそうに感じます。 「合成」と書いてあれば、なんとなく身構える。 この感覚そのものは、とても自然なものです。 ただ、この感覚が正しく働く場面と、まったく空振り … 続きを読む

飢餓を生き延びるための、配給システム ― 「誰が先に食べるか」を決める、門番たち

ひとつ、意外なことからお話しします。 ブドウ糖は、あなたの細胞に、勝手には入れません。 血糖が上がれば、糖は自然と細胞に吸い込まれていく——多くの方が、漠然とそう思っています。けれど、実際はそうではありません。ブドウ糖は … 続きを読む

ケトン値だけを見ても、わからない —— GKIという、二つの数字の関係

血糖値を自分で測る方は、ずいぶん増えました。 最近は、指先のひとしずくの血からケトン体を測る小さな機器も、家庭に届くようになりました。 たとえば、あなたのケトン体の値が1.0だったとします。 これは、低いのでしょうか。 … 続きを読む

分子に善悪はない — グルコサミンが関節を守り、脳を傷つける理由

2026年6月、自然科学の権威誌 Nature Metabolism に一本の論文が掲載されました。 関節痛のために何百万人もが飲んでいるグルコサミンが、認知症の進行を加速させる可能性があるという内容です。 ところが同じ … 続きを読む